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奇跡 2章 4

[368]  木村蜜実  2009-08-06投稿
引っ越しも済み、僕と春香は九州へ住む。

知らない街、知らない人、なにもかもが知らない生活。

僕が今、春香と仲良く暮らす事が、唯一生きがいになっている。

まだ、あかねの事は心に残っているけど…。

転勤先の上司は優しく、頼りがいもある。
新しい仕事にも慣れた。

春香はだんだん家に帰ってこなくなった。

何処へ行ってるのかもわからず、連絡はメールだけ。

『今日は遅くなる』

いつもこうだ。

一度二股を掛けていた僕だから、何となく春香の行動がわかる。

あかねと春香、
二人と付き合っていた時の僕に似ているからだ。

言葉を濁し、口数が減り、顔を合わせず、家に帰らず。

そんな毎日が、嫌になった。
とゆうか、去っていきそうな春香を追う事が疲れた。

生きがいがなくなりそうだった。



そんなある日、上司からお誘いで、飲みに行くことになった。

疲れもあるせいか、飲み過ぎてしまい、帰りは千鳥足だ。

「大丈夫か?井上君。」

上司は責任を感じたのか、心配そうに話しかける。

「大丈夫です。酔ってるけど、ちゃんとしてますから…。」

「ならいいけど、気をつけて帰れよ。明日は休みだから、ゆっくりしな。」

「はい、ありがとうございます。お疲れ様です。」

手を振って、曲がり角で別れる。

家に帰っても、春香はいないんだろうな…。

ふっと見上げた空。

満月が眩しく見えた。

あかねとよく見た満月。

あいつによく言ってた言葉を思い出す。

『奇跡って神様がくれるもんじゃないんだよ。奇跡は自分が作るもの。自分が頑張ればきっと奇跡が起きるんだよ。』

あの言葉は、僕自身にも言ってた言葉。

だから、ここまで頑張ってるんだ…。

…春香には言った事なかったな…。

ぼーっと考えて歩く。

後ろから光がさす。

車か…。

そう思った瞬間だった。

体が思いがけない方へ飛ぶ。

ブレーキの音。

頭を強く打つ。

…誰か救急車!…

飛び交うざわめき。

僕は引かれたのか…?

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