携帯小説!(スマートフォン版)

トップページ >> 恋愛 >> セピアカラー(1)

セピアカラー(1)

[625]  優風  2009-08-06投稿
・「あっ、くそまた間違えた」
僕はパソコンの前で苛立っていた。勤務時間はとっくに終了しているのに残業のせいでアフター“5”の時間もない。一日の就労時間八時間と労働基準法で決まっているが残業代を会社が支払えば意味がなくなる。
・入社して三年半が過ぎようとしていた。定時に帰宅できたのは最初の三ヶ月間だけでほぼこんな感じだ。大手の企業なら定時にきちんと帰宅できるだろうが子会社はそうはいかない。おかげ様で休日も疲れを癒すだけに使用している。昼まで寝てゴロゴロTVを見てバタンキュー状態。まさに休日だ。

・今日は大学時代の友人“田代”から久々に合コンの誘いのTELをもらったがしぶしぶ断った。“田代”も状態を察してるせいか今じゃ僕を深く問いつめない。理解してくれている。でも、他の連中は“相沢は付き合いが悪くなった”と思っている様だ。そういった事から今日は余計に苛立ちミスも多く見られる。

・時刻を見ると十時を回っていた。疲れのせいか目が痛い。なんだかしばしばする。そういう事からパソコンに向かう作業をやめて電源を切った。そして、帰り支度をし会社を出た所で聞き覚えのある声に呼び止められた。
「相沢」
声のする方に顔を向けると同期の“矢島”が僕を追って来る所だった。
「よう、お疲れ。お前も残業だったんだな」
「おかげで腹ペコなんだ。何か食ってかない?」

・それから僕達は会社から少し離れたラーメン屋に入った。
「こうも残業ばかりじゃやってらんねぇよな」
「さすがに慣れたさなんて 言えたら格好いいんだけどさ」
「言えねぇ、絶対言えないよ、それ」
「今日さ、大学時代の友達から合コンの誘いがあったんだけど丸潰れだよ」
「へぇー、合コンか。持ったいないな」
そう言って“矢島”は僕のグラスにビールを注ぐ。食べ終えてからもグチこぼしは続いた。

・駅で“矢島”と別れ汽車に揺られながら帰宅する中、ふと僕は斜め前の女性の顔に見覚えを感じた。彼女はうつむいた姿勢でこん色のスーツを着用していた。だが、どうも思い出せない。声を掛けようとしたが内気な性格が邪魔をして声を掛けれずにいた。そうしてる内に僕が降りる二つ前の駅で彼女は汽車を降りた。スゥーと降りて行く彼女の後ろ姿を目で追う自分を感じた。ドアが閉まり動き出した汽車の窓から流れる景色を見ながら小学校時代の卒業記念写真を思い出した。

感想

感想はありません。

「 優風 」の携帯小説

恋愛の新着携帯小説

利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス