ほんの小さな私事(63)
渡り廊下には、広まった噂で、野次馬が次第に増えていった。
倉橋先生は、どうしていいものかわからずに、周囲の生徒を、犬の死骸から遠ざける所まで下げたものの、あとどうするかを迷い、おろおろするばかり。
そんな時、駆け付けてきたのは、瀧口先生であった。
瀧口先生は、最初、犬の死骸を見て、一瞬たじろいだが、すぐに冷静さを取り戻すと、倉橋先生に向かって言った。
「状況はどうなっているか、わかりますか?」
「い…いえ…。私も先ほどここに来たばかりで…何も…。」
その返答に瀧口先生は、軽くため息を吐いたあと、今度は、犬の様子を調べている山崎さんに声を掛けた。
「これは一体…?」
その言葉に山崎さんが反応し、振り向く。
「良く解らんが、鋭利な刃物の様なもので首をかっ切られておるようじゃ。こちらは…イタチじゃな。体に幾つかの傷がある。これは噛まれた跡…この犬がこやつを噛んだのじゃろう。この二匹がここで争っていたんじゃろうが、この犬の首が如何様に切れたのかは…謎じゃ。」
そう言われて、瀧口先生は、改めて、二匹を見てみた。
犬は、首から左肩にかけて、スッパリと切られている。
その周囲には、この犬のものであろう真っ赤な血が、廊下と柱に飛び散っていた。
まだ血の色が鮮やかなのは、この犬が息絶えてから、さほど時間が経っていない事を示していた。
一方、その隣に倒れているのは、一見、ネズミにも見えるが、そうでなく、山崎さんが言う、イタチであろう。
胴体と首根っこの辺りに、幾つかの傷があり、これが犬に噛まれた跡なのだろう。呼吸している様子もなく、ピクリとも動かないのを見ると、既に息絶えてしまっているものと思われる。
ただ、妙に感じるのは、犬の血が、このイタチを避ける様に、辺りに広がっている事。これを含め、この状況はあまりにも奇っ怪であった。
「何はともあれ、保健所に連絡を。念のため、警察にも連絡を入れておきましょう。事件の可能性も否めないので。」
瀧口先生がキビキビと動く一方、倉橋先生は、相変わらずおろおろし続けていた。
倉橋先生は、どうしていいものかわからずに、周囲の生徒を、犬の死骸から遠ざける所まで下げたものの、あとどうするかを迷い、おろおろするばかり。
そんな時、駆け付けてきたのは、瀧口先生であった。
瀧口先生は、最初、犬の死骸を見て、一瞬たじろいだが、すぐに冷静さを取り戻すと、倉橋先生に向かって言った。
「状況はどうなっているか、わかりますか?」
「い…いえ…。私も先ほどここに来たばかりで…何も…。」
その返答に瀧口先生は、軽くため息を吐いたあと、今度は、犬の様子を調べている山崎さんに声を掛けた。
「これは一体…?」
その言葉に山崎さんが反応し、振り向く。
「良く解らんが、鋭利な刃物の様なもので首をかっ切られておるようじゃ。こちらは…イタチじゃな。体に幾つかの傷がある。これは噛まれた跡…この犬がこやつを噛んだのじゃろう。この二匹がここで争っていたんじゃろうが、この犬の首が如何様に切れたのかは…謎じゃ。」
そう言われて、瀧口先生は、改めて、二匹を見てみた。
犬は、首から左肩にかけて、スッパリと切られている。
その周囲には、この犬のものであろう真っ赤な血が、廊下と柱に飛び散っていた。
まだ血の色が鮮やかなのは、この犬が息絶えてから、さほど時間が経っていない事を示していた。
一方、その隣に倒れているのは、一見、ネズミにも見えるが、そうでなく、山崎さんが言う、イタチであろう。
胴体と首根っこの辺りに、幾つかの傷があり、これが犬に噛まれた跡なのだろう。呼吸している様子もなく、ピクリとも動かないのを見ると、既に息絶えてしまっているものと思われる。
ただ、妙に感じるのは、犬の血が、このイタチを避ける様に、辺りに広がっている事。これを含め、この状況はあまりにも奇っ怪であった。
「何はともあれ、保健所に連絡を。念のため、警察にも連絡を入れておきましょう。事件の可能性も否めないので。」
瀧口先生がキビキビと動く一方、倉橋先生は、相変わらずおろおろし続けていた。
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