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ほんの小さな私事(65)

[361]  稲村コウ  2009-08-10投稿
そんな風に、休憩がてら、私たちがしゃべっていると、遠くから次第に、こちらに近づいてくるサイレンの音が聞こえてきた。
暫くして、サイレンの音が一番大きく聞こえていた所で止まった。
「一体…何なのでしょう?学校の校舎側に来た感じですが…。」
「何か事件とか?なんだろ?…気になるなぁ…。」
私たちは、そう言いつつ、音の響いていた方向に目を向けてみたが、弓道場は壁に囲まれているので、外の様子は見えない。
私は高野さんの方向に目を向けてみると、予想通り、いかにも様子を見に行きたいといった感じで、カメラを手に構えていた。
私はそれを見て、クスッと笑い、「気になるなら、行って見てくると言いかもしれません。」と言った。
「あ…あら、そう?んー…それじゃ、ちょっと見てこようかな?すぐに戻るから、まっててね。」
高野さんは、そう言って、苦笑いしながら、素早くカメラバッグに荷物をしまい込むと、足早に弓道場を飛び出していった。
私はその背に向かって、何故か、「きをつけて」と言っていた。それは私がこの時、何となく、嫌な予感を覚えていたからであった…。

現場では、警察官が二人、辺りの様子を調べていて、その一方で、後からやってきた保健所の人間が二人、二匹の動物の死骸を処理していた。
瀧口先生たちは、その様子を見ながら、それぞれ、このあとどうするかを話し合っていた。
「ここ最近、変な事件が頻発していますね…。暫くは放課後、全部活を控えさせるべきかも知れません。」
教頭先生がそう言ったが、それに対し、瀧口先生が、冷静に答えた。
「それはそれで良いですが、いきなそんな事を全校生徒に言っても、混乱を招くだけです。何はともあれ、職員会議で慎重に対応を決めていきましょう。」

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