ほんの小さな私事(67)
高野さんが現場を見に行っている頃、私は妙に、嫌な予感を覚え、弓を引くのに集中する事ができなくなっていた。
『どうも集中できませんわ…。なんでしょう…どうも落ち着きませんね…。』
そう思いながら私は、一度、大きく息を吐いた後、ゆっくりと弓をおろした。
そして、床に正座し、弓を床に置いてから、目を瞑って、心を落ち着けようと試みた。
静まり返った空気のなかで、余計な思いを振り払い、精神を研ぎ澄ます。
僅かに遠くから聞こえていた鳥の声や、竹刀がぶつかりあう音などが、次第に薄れて行く。
時間にしては、ほんの僅かな時間であったが、この短い間に、私は、雑念に支配されていた心を無にし、精神を高めてゆく。
そんな時、どこからか、私の耳に届いてくる音…。いや、音というよりは、何かの声だろうか?
『………意識を……中心に…………気の流れ……高めよ………』
途切れ途切れの声。正確には声ではなかったが、私にはそれらが声として感じる事が出来た。
突然聞こえてきたその声に、私は目を開けて周囲を見ようとしたが、何故か目を開けることができなかった。
『感じよ………邪念を断つ力を………』
何の事かは解らなかったが、私は、声の意図する何かを感覚で理解すると、己自身の精神を、体の中心に集めるイメージを頭に思い描いた。
すると、次第に、体の芯が熱くなっていくのを感じ、そこで私は、ゆっくりと目を開く。
視界に先ず入ってきたのは、なにやら揺らめく陽炎のようなもの。
なんとなく私は、自分の手を目の前にあげてみた。
手の回りを包むように、揺らめく光のようなもの。
私は驚いて、手を軽く振ってみると、その光は、空気に溶けるように、飛び散り消えていった…。
『どうも集中できませんわ…。なんでしょう…どうも落ち着きませんね…。』
そう思いながら私は、一度、大きく息を吐いた後、ゆっくりと弓をおろした。
そして、床に正座し、弓を床に置いてから、目を瞑って、心を落ち着けようと試みた。
静まり返った空気のなかで、余計な思いを振り払い、精神を研ぎ澄ます。
僅かに遠くから聞こえていた鳥の声や、竹刀がぶつかりあう音などが、次第に薄れて行く。
時間にしては、ほんの僅かな時間であったが、この短い間に、私は、雑念に支配されていた心を無にし、精神を高めてゆく。
そんな時、どこからか、私の耳に届いてくる音…。いや、音というよりは、何かの声だろうか?
『………意識を……中心に…………気の流れ……高めよ………』
途切れ途切れの声。正確には声ではなかったが、私にはそれらが声として感じる事が出来た。
突然聞こえてきたその声に、私は目を開けて周囲を見ようとしたが、何故か目を開けることができなかった。
『感じよ………邪念を断つ力を………』
何の事かは解らなかったが、私は、声の意図する何かを感覚で理解すると、己自身の精神を、体の中心に集めるイメージを頭に思い描いた。
すると、次第に、体の芯が熱くなっていくのを感じ、そこで私は、ゆっくりと目を開く。
視界に先ず入ってきたのは、なにやら揺らめく陽炎のようなもの。
なんとなく私は、自分の手を目の前にあげてみた。
手の回りを包むように、揺らめく光のようなもの。
私は驚いて、手を軽く振ってみると、その光は、空気に溶けるように、飛び散り消えていった…。
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