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負い目

[866]  2009-08-15投稿
結婚12年目にして女房に離婚を切り出された時

俺は生きる気力をなくした。

真面目だけが取り柄な俺。

女房と子供三人のために
仕事とバイトの掛け持ちをして、懸命に働いてきたつもりだった。

だが、どう言い訳しようと、女房は俺を捨て他の男を選んだのだ。

夫として男としても失格なんだと、言われてる気がした。

離婚してからも、そんなことばかり、毎日考えては落ち込んでいた。

まさか医者に『鬱病』と診断されるとは思わなかったが…

サイトのブログで鬱病に苦しむ女性を見つけた時、同じ苦しみを共感できる者として運命を感じたほどだ。

だが厄介なことに彼女は霊感の持ち主だった。


恋人として付き合い始めしばらく経った頃

夜中に突然 彼女は起き出して天井を指差し

『ほら子供が三人走り回ってる』

『壁から、こっちを覗いてる顔がある。沢山いる。気持ち悪い顔、血だらけの男が睨んでる』

恐怖に怯えたかと思ったら今度は、焦点の定まらない眼差しで俺を見る。

常に目は虚ろで生気がなく毎日 何もせずぼんやりと暮らしている女だった。

彼女は一人暮らしだったが重度の鬱病のため、社会生活は難しく生活の面倒は、親戚がみているようだった。

ただ、ぎらぎらした目で髪を振り乱しながら、包丁で空を切る彼女を見ていると、恐怖感よりも哀れさを感じた。

空気が淀む薄暗い部屋の中で、身体を丸めて寝ている彼女を見ていると

おかしな話しだが、俺は次第に自分を取り戻していった。

しっかり生きなくてはと 思うようになった。

同時に彼女との別れを考え始めた。

彼女によって救われたのに自分勝手な話しだと思う。

彼女の叔母に当たる女性と連絡を取り合った。
今後の彼女の治療について会って話しをした。

包丁を振り回す行為を、黙って見過ごすわけにはいかない。

話し合いの結果、病院に収容させるしか他に手だてはないと意見が、まとまった。

親戚の女性が俺に言った。
『あの娘の霊感は本物だと私は思っています。怖いと思います。苦しいと思います。でも貴方にも幸せになる権利はあるのよ』

涙が溢れ出て止まらなかった。

言い訳はしない。
俺は彼女を見捨てたのだ。

その後 俺は彼女に別れを告げた。

荒れ狂うかと覚悟してたが、彼女は穏やかに微笑んでいた。

『それが正解だよ』

彼女の言葉は一生忘れない。

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