MLS-001 019
ガタガタガタガタ
暗い木々の間を
吹き抜ける湿った風は、
倉庫の入り口の
シャッターと一緒に
真龍の迷う心も揺らした。
血みどろの
金属の塊とともに
たった一人、
薄暗い倉庫に留まるか。
晴牧とともに
人々の眠る街へ帰るか。
晴牧は小心者だが
心の底に熱い泉をもつ
頼れる男だ。
錯乱していても
真龍が声を掛ければ
街まで乗せてくれるだろう。
でも、
今ここを離れたら
二度と花鼓に
会えないかもしれない。
真龍は、
一度上げた手を下ろした。
シャッターの前まで
たどり着いた晴牧は、
もう一度
花鼓の方を振り返って
軽く会釈し、
そのままシャッターをくぐり
冷たい外気の中へ
出ていった。
ガタガタガタガタ
風に揺れるシャッターの音が
ピンと張り詰めた
真龍の心の糸に
そっと触れた。
バタン
車のドアの閉まる音。
ブルロッ、ロロ…
車にエンジンのかかる音。
ガラジャラジャラジャラ…
タイヤが
砂利を踏み分ける音。
音は
瞬く間に小さくなり、
すぐに聞き取れなくなった。
行っちゃった。
ガタガタガタガタガタ
風に揺れる
シャッターの音は、
もう真龍の心には届かない。
黒髪の少女は
ゆっくりと
血みどろの機械の方へ
顔を向けた。
----------------
※ご挨拶※
ご一読ありがとうございます。
勝手ながら
夏休みを頂戴しておりました。
また来週より投稿再開の予定です。
宜しくお願い致します。
暗い木々の間を
吹き抜ける湿った風は、
倉庫の入り口の
シャッターと一緒に
真龍の迷う心も揺らした。
血みどろの
金属の塊とともに
たった一人、
薄暗い倉庫に留まるか。
晴牧とともに
人々の眠る街へ帰るか。
晴牧は小心者だが
心の底に熱い泉をもつ
頼れる男だ。
錯乱していても
真龍が声を掛ければ
街まで乗せてくれるだろう。
でも、
今ここを離れたら
二度と花鼓に
会えないかもしれない。
真龍は、
一度上げた手を下ろした。
シャッターの前まで
たどり着いた晴牧は、
もう一度
花鼓の方を振り返って
軽く会釈し、
そのままシャッターをくぐり
冷たい外気の中へ
出ていった。
ガタガタガタガタ
風に揺れるシャッターの音が
ピンと張り詰めた
真龍の心の糸に
そっと触れた。
バタン
車のドアの閉まる音。
ブルロッ、ロロ…
車にエンジンのかかる音。
ガラジャラジャラジャラ…
タイヤが
砂利を踏み分ける音。
音は
瞬く間に小さくなり、
すぐに聞き取れなくなった。
行っちゃった。
ガタガタガタガタガタ
風に揺れる
シャッターの音は、
もう真龍の心には届かない。
黒髪の少女は
ゆっくりと
血みどろの機械の方へ
顔を向けた。
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※ご挨拶※
ご一読ありがとうございます。
勝手ながら
夏休みを頂戴しておりました。
また来週より投稿再開の予定です。
宜しくお願い致します。
感想
- 24871: 翔:音が伝える心の描写…素晴らしいです。 [2011-01-16]
- 27238: 実験的試み、読み解いて下さりありがとうございます〜! [2011-01-16]
- 27239: 失敗の感が拭えなかっただけにコメント嬉しいです:遥花 [2011-01-16]