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ほんの小さな私事(80)

[344]  稲村コウ  2009-08-27投稿
林さんに諭されて、下校する事になった私たちは、林さんと共に校舎側へと移動していた。
その時、渡り廊下側から、高野さんと瀧口先生がこちらにやってくるのが見えた。
「沙羅ちゃーん、香取ーん、カズちゃんはー?」
高野さんが遠くから手を振りつつ、そう大きな声で私たちに聞いてきたが、私が首を横に振ると、高野さんは、眉をひそめた。
「うーん…あの子、どこにいっちゃたのかしら?」
腕組みをしつつ、高野さんは、そう呟いた。
「もしかしたら、教室に戻っているかも知れません。あとでA組の教室も覗いていってみましょう。」
「そうだねー。」
私たちがそう話していると、香取君が瀧口先生に、山下さんの事を話していた。
「…という事で、僕たち、山下さんを捜していたんです。でも、やっぱり見つからなくって…。」
「彼女、図書館から出ていってから、こちらには戻っていません。もしかしたら、校舎に居るのだと思いますが、私からも、あの子を捜してもらえる様、お願いします。」
林さんも、香取君の言葉のあとにそう言うと、瀧口先生は、落ち着いた表情で答えた。
「わかりました。まだ残っている先生方にも話を通して、山下を捜す事にしましょう。あとは任せて下さい。そして…お前たちは、早く下校する事。いいな?」
そう言われ、私と香取君は、「はい。」と返事をしたが、高野さんだけは、その言葉にムッとした表情を見せていた。
「わかってるわよー。さっさと帰ればいいんでしょ?さっさと。」
「全く…本当にお前はいつもそんなだな…。私は慣れてるから良いんだが、そんな調子で他の先生方なんかを困らせてくれるなよ?」
瀧口先生のその言葉に、高野さんは、「余計なお世話よッ!さー、沙羅ちゃん、香取ん、いこ!」と言って、自分一人、先にどんどんと歩いていってしまった。
呆れ顔の瀧口先生。それを見ていた残りの皆は、苦笑いになっていた。

結局このあと、林さんと校舎一階の階段で別れ、私たちは、自分の荷物を取りに、教室へと戻った。
それに併せ、A組の教室も覗いていってみたが、そこに山下さんの姿は無かった。
ただ、山下さんの机の横には、まだ、彼女の鞄が下げられたままになっていた…。

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