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消えた30の瞳 ?

[376]  内田俊章  2009-09-01投稿
 矢口たちは、北側の谷を、一つずつ捜索することにした。

 雪が積もったとは言え、昨日の今日である。

 もし墜落したのなら、何らかの残骸が有っても良いのだが、それが何一つ発見出来ない。

 一つの谷の万年雪は、学校のグランド程もある。

 捜索隊は、積もった雪を足でかき分けながら、滑らかな雪渓の表面に、セスナ機が接触した傷が無いかを、探して歩いた。

 「この辺は、3m位(万年雪の深さ)だな」

 野崎は、地図を広げて言うと、矢口が口をはさんだ。

 「いや、5mは有る。そしてその下は更に10mの谷だ!」

 「お前は、又そんな事を言うのか?」

 役所が作った地図を頼りにしている野崎と、それを否定する矢口は、何時も“恐神岳”の地形図の事でぶつかった。

 恐神岳は地形が複雑で、尾根と谷が、幾重にも重なり合っている。

 まして北側は、万年雪が覆い、正確な地図など書ける訳がなかった。

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