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チンゲンサイ。?

[462]  麻呂  2009-09-02投稿

その日の夕食は、俺の嫌いな、チンゲン菜の炒め物だった。

『おい。ユキエ。
俺がチンゲン菜が食えない事、知ってるだろ?!』


妻は、少し苛立っていた俺の顔を、じろりと睨みつけた。


『あら?!そうだったかしら?!

嫌だったら食べないでください。後で片付けますから。』


少し膨れっ面の妻の顔を、今度は俺が睨みつける。


『まぁいい。今は、そんな事よりも、父さんからリョウとユウに話さなければならない事があるんだ。』


テーブルの向かい側に2人並んで座る、リョウとユウに、俺は毅然とした態度で言った。


いつもなら、夕食は各自バラバラの時間に済ませる事が多い我が家だが、


今日は珍しく、家族全員揃っていた。


『あ???何???
親父。もしかして、リストラの話?!

それなら知ってるよ。さっき会社の人が来てただろ?!』


リョウが、俺とろくに目も合わせずに言った。


『親父、リストラされたんでしょ?!

どうすんの?!

リョウ兄と俺、来年早々受験じゃん?!
大丈夫だよね?!』

弟のユウも、兄に続いて俺に不安な表情で尋ねてくる。


『あぁ。リョウ、ユウ。父さん実はリストラされたのではなく、自分で退職願を出して会社を辞めたんだよ。

進学の事は2人共、心配しなくていいから、安心して勉強しなさい。

父さんも、きちんと次の就職先の事は考えているから、心配しないでくれ。』


今の俺が子供達に言える言葉は、それだけだった。


とりあえずは、仕事を辞めた事を、きちんと伝えなければならなかったのだ。


『ふぅん。ならいいけど‥‥。』


『ご馳走様。』


俺の言葉を聞き、2人共、ひとまず安心してくれた様だった。


難しい年頃の息子達に、とりあえずは分かってもらえた事に、俺は少しホッとした。

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