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ほんの小さな私事(89)

[347]  稲村コウ  2009-09-07投稿
なんとか人混みをかきわけ、下駄箱までやってきた私たち。
ある程度、下駄箱付近は人の数も少ないので、下駄箱周辺を見て回ってみるも、山下さんの姿を見つける事はできなかった。
「そういえば…山下さんの靴はどうでしょう?それを見れば、山下さんが校内にいるか、外にいるか…という手掛かりになるかと?」
「…そうね。ええっと…カズちゃんの下駄箱は…ここ!…靴、あるね。って言うことは…。」
「校内にいる可能性が高いです。」
もしかしたら、上履きのまま、外を歩いているという事も考えられるのだが、さすがに、中も外もと捜し歩くのは得策ではない。
故、私たちは、山下さんが校内にいると判断して、校内を捜し回る事に決めた。
「でも、どこをどう捜したらいいんだろ?」
「判りません…。ですが今は、思い付く場所をそれぞれ見ていくしかありません。」
「そうだよね。わかった!じゃ、私はこっち行ってみる。沙羅ちゃんは反対から捜してみて。」
「ええ。」
高野さんは、下駄箱から北方面を捜す事にし、私はその反対である、一階の廊下を回る事にした。

高野さんと別れ、私は、登校して教室に向かう人の群に平行して進んだ。
先ほどに比べ、流れに沿って移動する為、少しはスムースに移動できたが、それでもやはり、急ぎたい気持ちと裏腹に、人混みに遮られてしまうのがもどかしい。
なんとか保健室前の廊下に出て、人が分散し始めている辺りから漸く、移動するのが楽になったが…ここからどう、巡っていつたらいいものか…。
取り敢えず、保健室の扉が開きっぱなしになってきるのに気づいた私は、軽くドアをノックしながら中を覗き込んだ。

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