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ほんの小さな私事(92)

[332]  稲村コウ  2009-09-10投稿
結局、保健室にも山下さんはいなかった。手掛かりになるような事もなかったが、気になる事は多くあった。
まず、保健室にいた怪我をした生徒たち。カッターで切られた様な傷や、服の切れ方は、ここ連日起こっている事件との関連がありそうだ。
また、それとは関係無い事だが、保健の先生である加藤なつきさんは、私の叔母であるという事が判明した。
ただ、なぜ昨日、対面した時に気づかなかったのか…というのもあるのだが、そのあたりは、後になって、なつきさんが私の事を、どこからか聞いてきたとかなのかも知れない。
それよりもっと気になったのは、彼女に肩を叩かれた際、何か不思議な感覚にとらわれた気がしたのだが、あれはなんだったのか?
気になる事は多々あったが、今はそれぞれの事を深く考えている余裕など無い。
私は、保健室後にしてから、廊下の西側へと向かった。

こちらからは、図書館と校舎玄関口へと向かう事ができる。
勿論、向かうのは図書館方面。山下さんが居るとすれば、そちらに違いない。
こちらの経路には、生徒はほとんど歩いておらず、すれ違うのは、遅めにやってきた先生が一人二人ていど。
それぞれの先生に、とおりがかりで挨拶をしつつ、私は図書館側へと急いだ。
廊下の西端から外に出て、渡り廊下に繋がる道を進む。すると、渡り廊下との繋がり辺りに誰かの人影が見えた。
眼鏡をかけて矯正しているとは言え、私は近眼な上に、ここ最近、この眼鏡の度も合わなくなってきているせいか、さすがに距離があると、姿から人を特定する事が出来ない。
故、近づいて、その姿を確認しようとしたのだが、その人影を覆っている靄を見て、私は驚いた。
「赤い…。いいえ…赤と青が混ざりあっている様な…。このような色の靄は初めてみるわ…。」
今まで見てきたものは、単色の靄ばかりであったが、今回見たそれは、双方が絡み合って、渦のような柄となっていた。
何にしても、赤い靄は不吉の象徴。私は少し躊躇したものの、両手を重ねて胸にかざし、誰に向けるでもなく頷くと、その人影に向かって歩みを進めた。

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