ほんの小さな私事(93)
私は、赤と青の混ざり合った靄を纏っている人影に近づいていった。
ある程度寄ったところで、その人影が誰か、特定できるようになり、それが、山下さんの後ろ姿だと気づいた。
「山下さん!」
私がそう呼び掛けると、山下さんは、その声に反応して、こちらを向いた。
虚ろな表情でこちらを見る彼女。視線はこちらを向いているものの、心そこに在らず…といった雰囲気を見せていた。
「山下さん。心配しましたよ。今までいったい何処に行っていたのですか?」
そう言いながら、私は、彼女に近づいてゆく。すると彼女は、急に怯えた表情になり、後退りした。
「コナイデ…ヤメテ…」
そう言いながら、私との距離をとる様に、後退りを続ける彼女。
異様な雰囲気を強めていたのは彼女の声。まるで、彼女自身の声に、他の音がミキシングされて、更にエコーをかけた様な音になって、私の耳に響いてきた。
彼女を取り巻いている靄も、彼女の心を表しているが如く、激しく蠢いていた。
『何が起こっているというの?山下さんに何が…?』
私は、少し歩みを早めて、山下さんに近づいていく。だが、山下さんは、首を横に振りながら、「ダメ…ダメ…コナイデ…」と言いながら後退りを続ける。
あともう少しで、彼女に触れられるぐらいの距離来た時、不意に私の視界が急激に変化した。
バチッ!
何かが破裂するような音。そして、突然、全身に走る痛み。
何かに吹き飛ばされたと気づいたのは、私が芝生のある地面に叩きつけられた瞬間だった。
それを理解できたものの、その後、私はそのまま、芝生の上で意識を失ってしまった…。
ある程度寄ったところで、その人影が誰か、特定できるようになり、それが、山下さんの後ろ姿だと気づいた。
「山下さん!」
私がそう呼び掛けると、山下さんは、その声に反応して、こちらを向いた。
虚ろな表情でこちらを見る彼女。視線はこちらを向いているものの、心そこに在らず…といった雰囲気を見せていた。
「山下さん。心配しましたよ。今までいったい何処に行っていたのですか?」
そう言いながら、私は、彼女に近づいてゆく。すると彼女は、急に怯えた表情になり、後退りした。
「コナイデ…ヤメテ…」
そう言いながら、私との距離をとる様に、後退りを続ける彼女。
異様な雰囲気を強めていたのは彼女の声。まるで、彼女自身の声に、他の音がミキシングされて、更にエコーをかけた様な音になって、私の耳に響いてきた。
彼女を取り巻いている靄も、彼女の心を表しているが如く、激しく蠢いていた。
『何が起こっているというの?山下さんに何が…?』
私は、少し歩みを早めて、山下さんに近づいていく。だが、山下さんは、首を横に振りながら、「ダメ…ダメ…コナイデ…」と言いながら後退りを続ける。
あともう少しで、彼女に触れられるぐらいの距離来た時、不意に私の視界が急激に変化した。
バチッ!
何かが破裂するような音。そして、突然、全身に走る痛み。
何かに吹き飛ばされたと気づいたのは、私が芝生のある地面に叩きつけられた瞬間だった。
それを理解できたものの、その後、私はそのまま、芝生の上で意識を失ってしまった…。
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