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チンゲンサイ。?

[422]  麻呂  2009-09-15投稿

俺の声に気付いたのは、ユウではなく、ユウの相方だった。

『おい、ユウ。アレ、お前の知り合い?!』


ユウと一緒にいた男子中学生が、後ろを振り返り、


俺を、何か汚いモノでも見るかの様な目で見つめている。


『あ〜???知らねーよ。そんな汚ねーオッサン。早く行こうぜ。』


なんと、ユウは俺の方を少しも振り返る事も無く、その場を去って行ってしまった。



“汚ねーオッサン”


我ながら、情けないと思った。


自分の息子に、そう呼ばれるなんて、思ってもいなかった。

その言葉は、辞めた会社の上司から馬鹿呼ばわりされた時よりも、


俺の心にひどく応えた。


しかし、ユウのヤツ、こんな早い時間にほっつき歩いて、


何をしているのだろう。


今は、テスト期間中だっただろうか。


思えば俺は、子供達の事を何も知らなかった。


リョウは、ユウとは逆に、最近帰りが遅かった。


妻から、彼女が出来たとか出来ないとか、


そんなたぐいの話を聞かされた様な気がするが、


その記憶も曖昧だった。


仕事を辞めてからというもの、今まで見えなかったモノに気付く様になった気がする。


俺は、ずっと妻にとっての理想の夫を演じてきたつもりだったが、


そもそも妻にとって俺は、本当に理想の夫であったのだろうか。


大して出世欲も無く、不器用で、ただ真面目だと言う事だけが取り柄の俺にとって、


ただがむしゃらに働いて、金を稼ぐ事が、妻にとって1番喜ばしい事だと思っていた。


それが理想の夫像だと思っていた。


しかし本当に、それでよかったのだろうか。



――シラネーヨ。ソンナキタネーオッサン――



さっき、ユウに言われた一言が、


また、俺の心に鳴り響いていた――

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