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ほんの小さな私事(97)

[342]  稲村コウ  2009-09-16投稿
なつきさんは、ポケットから一枚、紙切れを取り出すと、それに気を込めて、私の胸の辺りにかざした。すると、飛散しつつあった、私の作り出した気の光が、紙切れに集まってきて、のち、その光は、私の身体の中へと吸い込まれていった。
するとどうだろう?次第に先ほどまで感じていた気だるさが、無くなっていくのを感じた。
「沙羅、お前さんは、退魔師としての素質と、それに関する高い能力を有している様だな。…ただ、あまりにも強大な力を扱える反面、お前さんはまだ、年齢相応の未発達な身体故、強大な力を扱うのに耐えきれないのかもしれない。それに、気をコントロールするのもままならないようだしな。どうやら暫く、私が、その気のコントロールの仕方を教えないといけないのかも知れない。」
そうは言われたものの、私は事を、頭で整理するので精一杯であった。
退魔師とは何なのか?私が霊能力を持つ一族であるのならば、祖父や弟にも、そういった能力が備わっているのか?
そして何より、母親についての事など…。
全く事実を知らされていなかっただけに、色々と何かを知っているなつきさんに、色々と聞きたかった。しかし、何からどう聞いていいのか、心の中で整理しきれていなかった。

「多分、清音ねーさんからは何も聞いてないんだろう?まあ、混乱するのも仕方無いとは思うが、いずれはその力について、知っていかなきゃならなくなる。焦らず一つ一つ、覚えていくといいよ。私も出来る限りの助言なりするからさ。」
なつきさんは、飛散していた光が、全て私の身体に戻ったところで、軽くパンパンと手をはたきながら、「はい、おわりっと。」と言いながら、私に向かって、ウインクしてみせた。

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