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ほんの小さな私事(98)

[337]  稲村コウ  2009-09-17投稿
なつきさんとお話を続けていると、その途中でチャイムが鳴り響いた。
私はその音を聞いて、ふと時計を見てみる。すると時刻は、既に十時になっていた。
「ああ。お前さん、結構寝込んでいたからネェ。まあ、あれほどの邪気にあてられたんじゃ仕方無い。それでも結構、早くに回復したと思うよ。」
「邪気…?」
「ま、簡単に言えば、悪い気の事さ。人の精神に作用すると、体調を悪くしたり、精神を乱したり、或いは狂気にとらわれたりする事がある。その邪気を発する存在ってのが、怨霊だったり、地縛霊といったヤツなのさ。」
なつきさんは、また、タバコに火をつけ、それを吸いながら、そう説明してくれた。その時、扉をノックする音が聞こえてきて、続けて、扉を開いて瀧口先生と高野さんが、部屋の中に入ってきた。
「失礼します…って、加藤先生!生徒の前でタバコを吸うのは良くないと…。」
「あー、申し訳ない申し訳ない。換気は充分してるし、煙がそっちに行かないようにはしてるから…。」
「そういう問題ではありません!教頭先生が幾ら異例の許可を出しているからと言って…。」
何やら先生同士で言い合いがはじまってしまい、呆然とする私。その一方で、高野さんが、私のもとにやってきて、心配そうな顔をして言った。
「沙羅ちゃん、大丈夫なの?」
そう聞かれて私は、ニッコリと笑みを見せながら「ええ、何とかもう、大丈夫になりましたよ。」と答えた。

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