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アニキ【2】(全7話)

[979]  2009-09-22投稿
アニキはいつも明るく、誰に対しても人なつこかったので、友達も大勢いた。

俺はそんなアニキの性格を羨ましくも思ったし、尊敬もしていた。

またアニキはこんなことも言っていた。

「良くも悪くも人にレッテルを貼っちゃダメだ。人には、色んな一面があるんだから」

――いい言葉だと思った。

それ以来、俺は営業回りの時に、いくら嫌いな奴が相手でも、そいつの良い部分だけを一生懸命探すよう努力した。

そんなアニキのことだから、当然面倒見も良かった。

部下が困っていれば、身を呈してかばってくれた。

――1ヶ月前のことだった。

俺は取引先からの発注数量を間違え、相手先のイベントを台無しにしてしまった。

アニキを始め、俺たちの営業グループ全員で相手先に謝りに行ったが、それだけで収まりは着かなかった。

取引先は本社に対し、契約解除を言い渡しに来たのだ。

翌日、怒った本社の取締役が営業所にどなりこんで来た。

「おい!どこのどいつだ!!ウチの会社を潰そうとする奴は!顔見せろ!!」

その途端、俺の足はガクガク震え出した。

しかし、俺がこの場に出ないと収拾がつかない。

俺は震える右足を、そっと前に踏み出した。
(続く)

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