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アニキ【3】(全7話)

[980]  2009-09-24投稿
その瞬間、前にいたアニキの足が、俺の踏み出した右足の上にギュッと乗っかり、俺は声にならない声で「ア…」と叫んだ。

同時にアニキは前に向かって歩き出し、取締役に対し深々と頭を下げた。

「今回の件については、チームリーダーである私が全責任を負っており…ここにいるメンバーは…全く関知しておりません。この度は大変…申し訳ありませんでした」

穏やかな口調ながらも、決意に満ちたアニキの迫力に圧倒され、身動き出来ない俺はおろか、取締役もしばらく無言でアニキの垂れた頭(こうべ)を見つめていた。

やがて取締役が口を開く。

「この件については誰かの処分は避けられない。詳しくは、来週の懲罰会議後に発表する」

そう言って取締役は営業所を後にした。

居ても立っても居られなくなり、俺は取締役を追い掛けようと入口に向かって走り出したが、それをアニキが制止した。

「やめろ翔!これは本当にオレの責任なんだ。チームリーダーである私が、チェックを怠っていたからだ」

「だけど…なぜ先輩だけが責任を被る必要が…!!」

「オレの事は気にするなって!それより未来あるテメェ自身のことをもっと大事にしろよ」

アニキは優しく微笑んだ。
(続く)

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