MLS-001 028
吹き渡る青い潮風。
磯の匂いが、胸に熱い。
少し寝たからか、
無性に、喉が乾いた。
立って
海面を見ていると
水が飲みたくなるから、
花鼓は
眠る真龍の隣に座った。
林中の倉庫で
晴牧に殴られてから
ぼうっとしていた頭が、
今は、妙に
はっきりしている。
無惨だった顔も手も
擦り傷だらけだった足も
すっかり治っていた。
ついでに言えば、
左腕の点滴針の跡まで
消えていて、
そのせいか、
今すぐは
病院に戻りづらかった。
母さんと明広は、
きっと
心配しているだろうけど。
頭上は
いつの間にか、快晴。
さっきまで
空全体を覆っていた薄雲は、
消え損なった残党が
2、3個、
申し訳程度に
水平線の隅っこを
漂っているだけだ。
隣の真龍はといえば、
長い黒髪が
潮風にあおられて
くしゃくしゃになっても
構わずに、
静かな寝息を立てている。
差し当たり、
目の前で
無邪気に眠る少女が、
目を覚ましたら、
色々訊きたい。
何故、2人は
花鼓を誘拐したのか。
何故、晴牧は
殴りかかって来たのか。
何故、真龍は
彼の蛮行を
止めなかったのか。
そして、
意識が薄らいだとき、
目の前に浮かんだ
碁盤の目と、点の、意味。
それから、
港のコンテナの中に
造られていた、
謎の研究室の、正体。
花鼓自身なのか、
或いは、別人なのか、
よく分からない誰かが、
「メインベース」
と呼んでいた所だ。
切れ切れの記憶の中、
蘇る不気味な光景。
自分の手が、
手際良く
自分の身体を治していた。
いつ、何処で、
習い覚えたのだろう。
見事な手さばきで
見慣れぬ装置を操る手は、
壊れたパーツを交換し、
ネジで固定し、
縫合、形成。
外したパーツは
透明な容器に入れ、
その容器を、更に、
金属の機械の中に入れ、
赤く光る
パネルの数字を押した。
「軟部組織損傷32%
…大分派手にやられたわね。」
唇を緩め、
クスッと笑った。
自分であって、
自分でない者の記憶。
気味悪くも、
怖くもないけど、
何故か、一抹の寂しさが、
胸中に小さな空間を
作っている。
磯の匂いが、胸に熱い。
少し寝たからか、
無性に、喉が乾いた。
立って
海面を見ていると
水が飲みたくなるから、
花鼓は
眠る真龍の隣に座った。
林中の倉庫で
晴牧に殴られてから
ぼうっとしていた頭が、
今は、妙に
はっきりしている。
無惨だった顔も手も
擦り傷だらけだった足も
すっかり治っていた。
ついでに言えば、
左腕の点滴針の跡まで
消えていて、
そのせいか、
今すぐは
病院に戻りづらかった。
母さんと明広は、
きっと
心配しているだろうけど。
頭上は
いつの間にか、快晴。
さっきまで
空全体を覆っていた薄雲は、
消え損なった残党が
2、3個、
申し訳程度に
水平線の隅っこを
漂っているだけだ。
隣の真龍はといえば、
長い黒髪が
潮風にあおられて
くしゃくしゃになっても
構わずに、
静かな寝息を立てている。
差し当たり、
目の前で
無邪気に眠る少女が、
目を覚ましたら、
色々訊きたい。
何故、2人は
花鼓を誘拐したのか。
何故、晴牧は
殴りかかって来たのか。
何故、真龍は
彼の蛮行を
止めなかったのか。
そして、
意識が薄らいだとき、
目の前に浮かんだ
碁盤の目と、点の、意味。
それから、
港のコンテナの中に
造られていた、
謎の研究室の、正体。
花鼓自身なのか、
或いは、別人なのか、
よく分からない誰かが、
「メインベース」
と呼んでいた所だ。
切れ切れの記憶の中、
蘇る不気味な光景。
自分の手が、
手際良く
自分の身体を治していた。
いつ、何処で、
習い覚えたのだろう。
見事な手さばきで
見慣れぬ装置を操る手は、
壊れたパーツを交換し、
ネジで固定し、
縫合、形成。
外したパーツは
透明な容器に入れ、
その容器を、更に、
金属の機械の中に入れ、
赤く光る
パネルの数字を押した。
「軟部組織損傷32%
…大分派手にやられたわね。」
唇を緩め、
クスッと笑った。
自分であって、
自分でない者の記憶。
気味悪くも、
怖くもないけど、
何故か、一抹の寂しさが、
胸中に小さな空間を
作っている。
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