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代償 1

[483]  朱雀  2009-10-04投稿
春が本格的に動き出す5月。
俺は、ゴールデンウイークとは名ばかりのただの連休を前にして少し浮足立っていた。
仕事を終え、帰り道を急いでいる。時計代わりの携帯を見ると午後8時半を廻っていた。俺が住む街迄は後30分程電車に揺られれば着く。
今夜は女と約束をしていた。

結婚して、もう15年が経つ。
俺も歳を取るのも仕方ない。今年で40か。
妻は同い年で精神の病を患っている。7年前医者からは治らないと言われた。
そこから俺の歯車は狂ってしまったのかも知れない。
幻覚や幻聴に翻弄される妻に、俺自身が翻弄されてしまった。
始めは、俺が何とかしないと…と健気な旦那宜しく尽くすも、報われぬ日々に心は荒んで行く。
生まれ育った土地からは遠く離れた地で暮らす俺には、友達や家族など妻を除いて居なかった。
俺は夜の街で飲み歩くようになった。
上辺の会話、性欲だけのセックス。
小さな会社の為、ある程度上のポストであった俺は金にそれ程困る事もなく、仕事が忙しく、かつ、家庭の事も全てやっていたのでその疲れが溜まれば溜まる程、飲みに行く回数も増えた。
しかし、全てが永遠に続く訳は無く、遊ぶ金も尽きてきた。
それと共に、上手い事を言う人間達は潮が引くように離れていき、残ったのは虚しさをごまかしてきた自分自身と変わらぬ妻である。
彼女が憎かった。毎晩、彼女が朝起きたら死んでいるようにと祈った。自分の事は棚に上げて。
家に帰ると妻とは一言も話さぬ俺は、寂しさを紛らわすように、今度は会社内の人間に近付いた。
勿論、今までも話をしなかった訳では無いし上手くはやっていたが、それ以上の思惑を持って接するようになった。
馬鹿な話を軽く交わしていると、自分の問題を忘れられる。人と接するのを嫌っていた俺が、今は寂しさに人を求めている。
しかしそれは、心に開いた穴を広げる事しか出来なかった。
そんな中、知り合ったのが今不倫中の葛西佳代子だった。

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