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ほんの小さな私事(112)

[361]  稲村コウ  2009-10-07投稿
「山下さんが助けを求めてる…。いかなくちゃ…。」
香取君は、体の痛む場所を抑えながら、奥の部屋へと向かっていった。
そんな香取君を櫻井君は、肩を捕まえて制止する。
「ダメだよ、奥は危険なんだ。さっき君、吹き飛ばされただろ?また、同じ様に吹き飛ばされるかも知れない…。」
そう説得しようとした櫻井君だったが、話の途中で香取君は、肩に掛けられた櫻井君の手を振り払った。
「彼女が苦しんで助けを求めているんだ…!放っておく訳にはいかないだろ?僕が…助けるんだ…!」
彼はそう言って、改めて奥の扉に向かって歩き始めた。
「香取君!」
私も彼に向かって呼び掛けてみたが、どうやら彼は、山下さんね事しか頭にないといった様子であった。
「助けを求めていた…って、香取君は山下さんの声を聞いたのかしら…?」
「…解らない…。でも、今の彼は普通じゃない。彼に何があったんだ?」
櫻井君はそう言ったが、香取君に何かが取り憑いたり…などという様子は見受けられなかった。
その代わり、彼の体からは、ぼんやりとした光が発されているのに気付いた。
『もしかして彼も、何か力を持っているの?』
そう思いながら彼の事を見ていたが、櫻井君がフウッと息を吐き出したあと、私に向かって言った。
「僕たちも…奥へ…!」
「…ええ。」
そう言って頷きあった私たちは、香取君に続いて、奥の扉に近付いていった…。

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