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幼年時代

[521]  フェリス  2009-10-08投稿
人の最後ってどんななんだろうと思う事がしばしばある。僕はまだ人の死と直面した事が無い。家族が両親と妹だけなので、おじいちゃんやおばあちゃんのいる家庭の子が羨ましかった。きっと昔の思い出話や昔の知恵なんかを教えてくれるに違いない。


僕は短大を卒業するとホームヘルパーの資格を取った。憧れの老人介護だ。何故か同年代の仲間といるよりもお年寄りと一緒にいる方が落ち着くのである。そこまで気を使わなくても良いし、自分が自然体でいられるからだ。

今、僕のいる介護施設で亀山さんというおばあちゃんがいる。僕は亀山さんは陰ながらお気に入りである。

「咲いた、咲いたチューリップの花が、並んだ、並んだ赤、白、黄色・・・」と亀山さんは今日も元気に歌っている。このおばあちゃんは我が施設のアイドルシンガーだ。

昔、懐かしい歌をいつも口にしている。他にもさっちゃんや、あんたがた何処さや、迷子のおわまりさんなど昔懐かしい歌を歌っている。

彼女は陽気で屈託の無い表情でいつもスタッフと会話する。しかし、会話は凄く幼稚な会話が多い。それは痴呆のお年寄りにある普遍的なもので、僕らスタッフはいつも彼等に色塗りや幼稚なゲームを教える。

介護施設は例えるなら幼稚園みたいなものだ。亀山さんも聞いた話しによると記憶が幼稚園の時代でストップしてるとの事。他にも小西さんというおばあちゃんはよく男性スタッフにキスをしようとする。彼女も記憶が20代の恋愛適齢期まっしぐらの時で止まっているらしい。

他にも大竹さんと言う、おじいちゃんは戦争時代の時の記憶で止まってて、よく他の老人を敵と間違えて攻撃する人もいる。

たいていの痴呆の老人は最後は子供に帰って亡くなっていくらしい。人は赤ちゃんから始まり、子供になって勉強や遊びを励み、青年になって恋をし、成人になり仕事をし、家庭を持ち、最後はまた子供に帰るのだと言う。

僕はここの介護施設に来て、人の結末を分かった気がする。人は純粋で生まれ、色んな経験で擦れっからしや一人前の大人になるが最後はまた純粋な原点に戻るという事を。

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