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ロストクロニクル8―5

[366]  五十嵐時  2009-10-12投稿
海賊は全部で11人になった。
タクトとパールにとっては、さらに苦しい状況になってしまった。
「そっちが来ねぇからこっちから行くぜ!」
突然1人の海賊がこちらに向かって猛然と走ってきた。
「パール、できればあまり人は殺したくない。ぼくはなるべく急所は外すけど・・・協力してくれるかい?」
タクトは剣を構え横目でパールに協力を促した。
「本気で言ってるの!11対2でしかも相手は全力で向かって来るのよ!」
弓を引きながら目線を海賊達に向けたまま答えた。
「分かってるさ。そんなこと。けど、殺すのは・・・
いやだ!」
タクトは勢いよく飛び出して行った。
「バカ!作戦も無しに飛び出すなんて」
パールが一番手前の海賊の足に射おうとした瞬間
「てめぇら時間だ!傀儡のヤローが呼んでやがる!」
海賊達が出てきた船の上で、別の海賊がベルを掻き鳴らしながら叫んだ。
「ちょっと待ってやがれ!こいつらを・・・」
「バカ言え!ただでさえ遅れてんだぞ!」
ベルを掻き鳴らす海賊はなぜか異常に焦っているように見えた。
「へっ、悪ぃな」
「待て!」
「待つのはあなたの方よ。相手は11人になって、初めと状況は全く違うのよ」
パールは尚も海賊達の方へと睨みの利かせているタクトを諭した。
「だけど、あの人は!」
「あなたは死にたいの!」
パールは思わず大声を上げた。
「タクト、あなた、いえ、私たちの目的は海賊の討伐じゃないでしょ?」
「・・・だったら、君はこのままあの人がどうなってもいいのかい」
タクトは落ち着き、静かに言った。
海賊船はその間に出帆してしまっていた。

遠くの方でベルが掻き鳴らされる音が聞こえてくる。が、フラットとオキシーは微動だにしない。
「どうした?俺が船長だと知ってビビっちまったのか?」
「いいえ、ただ、あなたの様子を見てるだけです」
フラットは毅然とした態度で続けた。
「逃げるなら、早くした方がいいですよ」
「へへへへ、おもしれぇ。確かに早くした方がよさそうだな」
すると、オキシーはフラットに猪のような勢いで向かってきた。
「そうなるのか」
フラットは闘牛士のように左へかわした。
オキシーは体勢を整え、戦斧の頭上に掲げながら再び向かってきた。
フラットは素早くオキシーの懐に入り込むと何かの呪文を唱え始めた。

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