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ほんの小さな私事(122)

[361]  稲村コウ  2009-10-20投稿
青色の靄が消えてゆくのを山下さんは判っていたのだろう。
山下さんは、まるで、消えゆく青色の靄を抱き締めるが如く、両手を胸にもってきて、涙声で「ありがとう、ごめんね…。」と呟いた。
暫くして、山下さんの足元に、何やら小さな生き物か近づいてきて、小さな声で鳴きながら、彼女の足にすり寄ってきた。
それがどんな生き物かは、暗くて良くわからなかったが、どうやらそれが、先ほど山下さんが言っていた、子供たちなのだと理解した。
『ふむ、なるほど。あれらの母親が多分、妖怪化して、あれらを守っていたのだろう。だが、悪鬼に対抗して力を使いすぎ、消えてしまった…と。しかもあの娘をも守っていたとなると、あれらの母親とあの娘には、何らかの関係もあったに違いない。興味深い事だ。』
黒猫はそう言う一方、なつきさんが辺りを見渡しながら言う。
「なんにせよ、一段落したことだし、人が来る前に一度、ここから他へ行っておかないとネェ。誰かにこれを見られて騒がれたりしたら厄介…。」
と言った所で、なつきさんは、何かを見て苦い顔になった。

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