携帯小説!(スマートフォン版)

トップページ >> 恋愛 >> 友美の幽霊-????

友美の幽霊-????

[516]  矢口 沙緒  2009-10-24投稿
そこまで言って、友美は言葉を切った。
何かひらめいたらしい。
「ははぁ、分かったわ。だから話が噛み合わなかったのね。なるほどね。」
一人納得している。
「なーんか勘違いしているんじゃないかと思ってたんだけど。そういう事だったのね。まったく、あんたって本当に鈍感なんだから。呆れ返っちゃうわ」
「何が分かったんだよ。俺の頭、どうなっちゃったんだよ」
「あんたね、よーく思い出してみなさいよ。あんた、ここに帰ってくる途中で事故起こしたでしょ」
「事故?馬鹿言うなよ。俺は事故なんか…」
「いいえ。あんたのその様子は間違いなく事故よ。ほら、右のほっぺたにタイヤの跡もあるし。落ち着いて、よ〜く考えてみなさい。って言っても頭が半分ないから、考えがまとまるかどうか知らないけど。」
事故?…ここに帰る途中で…まさか、そんな事あるわけ…
あれ?ちょっと待てよ。確か俺、ぼーっと車運転してて、それで友美が死んだ事ばかり考えてて、ふいに涙が出てきて、それでその涙を手で拭って、顔を上げたら…えーっと、顔を上げたら…
そうだ!顔を上げたらトラックのヘッドライトが…
「どうやら思い出したらしいわね。だからあんたは鈍感の日本代表だっていうのよ」
俺はオリンピック候補か。
「だってそうでしょ。自分が死んだ事にも気が付かないんだもん。しっかりしてよね。」
えっ?俺が…死んだ?…車の事故で…俺が死んだ?
何言ってんだよ。そんな馬鹿な事あるかよ。だって俺ピンピンしてるじゃん。
全然元気じゃん。
どこにも異常ないじゃん。
…頭を除けば。
「俺が死んだって、なに訳の分からない事言ってんだよ」
「あのねぇ、頭が半分無いのに、まだ疑ってんの?それじゃ手で触ってみなさいよ。ほら!右側のこめかみから上半分がスッポリ無いでしょ。」
俺は恐る恐る手で頭の右側を触ってみた。
…無い!確かに無い!手に何も触らない。
念のため、もうちょっと奥まで手を入れてみた。
あっ!脳みそ触っちゃった。
「ねっ、これで分かったでしょ。あんたは、死・ん・だ・の!」
俺、死んじゃったんだ。
俺、死んじゃった。
全然気が付かなかったよ、死んだの。うっかりしてたなぁ。
気が付かないうちに、死んじゃったんだ。
自分が死んだ。そう自覚したとたん、なんだか寂しいような、つまんないような、そんな気持ちがわいてきた。

感想

感想はありません。

「 矢口 沙緒 」の携帯小説

恋愛の新着携帯小説

利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス