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ほんの小さな私事(125)

[380]  稲村コウ  2009-10-26投稿
暫くして、なつきさんが保健室に戻ってきた。
外の様子を見渡して確認したあと、彼女は、入り口のドアを閉め、鍵を掛けた。
そして、フーッと溜め息を吐いたあと、椅子に腰掛け、私たちを見渡しながら言った。
「いやはや…大変な事に巻き込まれて災難だったねぇ。でも、みんな無事で良かったよ。」
「もう、何がなんだか…。カズちゃんは無事に見つかったからいいんだけど…変な事が起こりまくるし、喋る猫がいたりとか、ワケわかんないことばっかりで、頭がおかしくなっちゃいそうよ…。」
まあ、私としても、高野さんが言うように、色々とまだ、現状を飲み込めていないし、どう気持ちを整理していいのか解らなくなっていた。
「まあ、そうだろうとは思うが、順を追って説明していかないと、もっと混乱しちゃうと思うし、君らが理解し難いような事も幾つかあると思う。まずは、私がこれから話すことは、紛れもない事実だと受け止めて聞いてほしい。」
そう喋るなつきさんの顔は、いつしか真剣になっていた。
私たちも、そんな彼女の顔を見て、頷きながら彼女の顔を見つめた。
「信じられないとは思うが、君たちは、いわゆる悪霊と戦っていたんだ。そこの娘に取り憑いていた、テングって呼ばれる悪鬼と、ね。」
「テング?…テングって、あの、昔話にあるような…?」
そう私が聞くと、なつきさんは、首を縦に振って答えた。
「そう。まあ、絵本や怪談なんかの挿し絵に描かれてるのとはちょっと違うけど。いわゆる妖怪って言われる存在で、ほぼ間違いは無いよ。」

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