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君の好きな人

[741]  ふく  2009-10-31投稿
『好きな人がいる』
君の告白に傷を負った
『その人には好きな人がいる』
君の言葉に悲しくなった
僕が泣きそうになったのは君が笑顔を崩さなかったから
『それでもいい』んだと君が笑うから

知りたくはなかった
君の好きな人の事なんか
聞けば聞く程に腹が立った
君の口から零れる愚痴
僕から言わせてもらえば
軽くていい加減で君を幸せになんて出来はしないとそう思えて仕方がなかった
それでも『そんな奴辞めとけよ』と言えなかったのは愚痴を言う時の君の顔が彼に対する愛情で満ち溢れていたから

『それなのにどうして彼の事好きなの』と僕が聞くと君は俯いて溜め息混じりに笑った
少しの沈黙の後君は顔を上げて真っ直ぐに僕の目を見た
その時君の目が涙で滲んでいた
『自分でも分からない』
そう言ってまた君は俯いた
『何だよそれ』
苛立ちが隠せずに呆れて僕は笑った
君の目から一粒の涙が静かに落ちる

しばらく君は泣いていた
どうしてあげる事も出来なかった
君の肩を抱く事も涙を拭ってあげる事も君の想いを止める為に強く言い放つ事も
僕は目の前で苦しみに耐えながら涙を流す君を見ている事が辛くてただ目を伏せる事しか出来なかった

『ただね…』
余りにも弱い君の声を聞き逃してしまいそうだった
赤く染まった目に強い意志を感じた
僕なりに優しく笑って
『何?』と聞き返した
君は力無く微笑んで溜め息を一つ着いた
『どうしようもない人なんだけどそれ以上にどうしようもなく好きなの』
その言葉は綺麗だった
たまらなく切なくてたまらなく胸を痛くした

君は凄いね
そんな風に言えるのだから
『そうか』
たった一言だけ言って僕は俯いた
君の恋を側で見届けよう
君が辛くても自分の想いを貫こうと君は決めているのだから
諦めとは違う
君のその言葉に大きな想いを感じたからこそそう思えたんだ

僕にも出来るだろうか
どうしようもない人を愛するどうしようもない君を
それでもいいんだと
それでもどうしようもない位に君の事が好きなんだと言ってこれからも愛し続ける事が出来るだろうか

だとしたら一つだけ願いがある
今はどうしても出来そうにないけれど
恋をする君を見守ると決めたから
君の苦しみも喜びも受け止めてあげたいから
まだ側で君を見ていたいから
まだ好きでいさせて欲しいから

せめて君の好きな人を
僕も好きになる勇気が欲しい

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