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ロストクロニクル8―13

[392]  五十嵐時  2009-11-03投稿
僅かに開いた袋の隙間から見えるのは、昼間だというのに濃霧のせいでまるで夜のように真っ暗な空だけだ。
「そういえば、今はまだ昼だったな」
そんな一人言を呟いていたら
「おい、そろそろ門の前に行くぞ。二人の門番が両脇を固めている」
引き締まった声色で「わかった」と返事してからまもなく、門の前に来たようだ。
「待て、貴様何の用だ」
キリッとした兵士の声を聞き、タクトも僅かな緊張を憶えた。
「あ〜?ふざけんじゃねぇよ!エアー海賊団の名を知らねぇとは言わせねぇぞ」
シルヴァは肩越しに袋を見せた。
「よし、わかった。それを渡せ」
「褒美をくれ」
「ああ、褒美はやる約束だからな。さぁ、それをよこせ」
「褒美が先だ!褒美だ!どうせ渡したら俺をその槍で刺すんだろうが!」
突然シルヴァが喚き始めた。
「黙れ!」
「褒美だ!」
もう一人の門番が口を開いた。
「金は慰めの牢獄の中だ。お前、こいつを連れて取って来い」
「え、でも」
「いいから行け!」
「了解しました」
門番は渋々返事をすると門を開き、シルヴァを中へ入れた。

「何か不審なまねをしたらすぐに殺すからな!」
「はいはい、わかってますよ〜」
門番をしていた兵士はシルヴァに前を歩かせ、後ろで槍を突き立て、道を指示していた。
「次を左に曲がれば監視室だ。そこに金があるから、取って帰れ」
「囚人どもはどこにいるんだ?」
予想に反して誰もいない事を不自然に思い、左に曲がりながら、何気ない事を装いながら聞いてみた。
「それは秘密だ」
兵士はなぜか不気味に笑ってみせた。
「まぁ、金さえ手に入れば文句はねぇけどな」
机の上の巾着を受け取ると袋をその場に降ろした。
「じゃあこれで」
「・・・待て」
兵士の静かな一言に緊張が走る。
「何だ?」
「貴様、エアー海賊団と言ったな」
兵士は何かに気付いたようにも見える。
「ああ」
「ならば、どの海賊船に乗っている」
兵士はシルヴァに向かって槍を構える。
「ハイドロ号だ」
「ハイドロ号?そうか」
兵士は下を向きながら笑った。
「ハイドロ号ならまだ帰って来ていない!」
「なに!」
兵士はシルヴァに向かって槍を突き刺した。
「やめろ!」
間一髪、タクトが槍を弾いた。
「誰だ!」
「囚人さ」

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