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神のパシリ 24

[370]  ディナー  2009-11-06投稿
「…何…?」

「だから、僕も神のパシリなの。君と同じなんだよ」

キアはそう言ってから、何事か呟いた。
人間にはわからない言語のものだ。

すると、キアの切断された傷口が、ゆるやかにではあるが接着されていく。

ゼルが大鎌を操作した時と同じ光景だ。

「…ほぅ」




「…僕は、月の女神のパシリさ。
月は夜や闇を冷たく照らし、人の闇を含めて照らす事で、暗闇に潜む邪神を縛りつける。
それが月と、月の女神の役割さ。
封じられた悪神には、厄介な存在かもね。」

座り込んだまま、キアは指を鳴らして先程の女従者を呼び寄せ、シャンパンを持って来させる。

「君もどうぞ」

「…いただこう」

二人は座ったまま、冷えた弾ける液体を流し込む。

「…君は、その大鎌だから、さしずめ死の神のパシリかな?」

「…あぁ」

「なるほどね。
月の女神は悪神、邪神を縛る存在。
でも、死の神は違う。
死と月は密接な関係にあり、月は死の理解者でもある。
うちの主は神々の中では変わり者だし、どうやら死に関して違う価値観があるみたいだし。
…君が死の神のパシリでよかったよ」

そう笑うキアの顔は、もう冷たいものではなかった。

邪な者には凍てつくような月光が、
夜を愛し尊ぶ者には温かく荘厳な月光がさすように。

「僕は、元々あんまり命令に忠実に従う方じゃないんだ。主も結構放任主義だしね。
で、人間世界ってさ、
野蛮で、
薄汚くて、
欲まみれで、
臭くて…

でも、楽しいじゃない?

だから、月の女神のパシリをしながら、人間の世界を楽しんでる、って訳だよ。
最近自分でもやり過ぎな気がするけどね」

「月の女神は仕事が少ないからな、呑気なものだ。
こちらは多忙を極めている。
人間が死を軽んじ、冒涜するのが今の人の世界では美徳とされているからな」

「辛口だね…でも、まぁ事実だろうね。
うちの主には、人間が歪めつつある天秤を釣り合わせる手助けを、もっと間接的かつスマートにやれ、とは言われてるよ」

「我が主には我が主のやり方がある」

「ごもっともだよ」

酔狂な理解者に、ゼルは鼻をふん、と鳴らした。

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