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ベースボール・ラプソディ No.3

[576]  水無月密  2009-11-08投稿
 不思議そうに八雲を見つめる哲哉。
「そう思う根拠は?」
「目だ」
 即答する八雲に、哲哉は小首を傾げていたが、思いあたる事があると、笑みをうかべて頷いた。
「そういえば大澤さんは野球の話をする時、無意識に目を逸らしていたな。確かに以前の誰かさんにそっくりだ」
 そういって哲哉が笑うと、それに同調して八雲もカラカラと笑ういだした。

「しかしなぁ、大澤さんを入れても八人だもんなぁ。あと一人、何とかしねーとなぁ」
「あっ、それ大丈夫だ。俺の方で都合がつきそうだからな」
「流石はてっつぁん、相変わらず手際がいいな。
 で、そいつは中学時代に天才スプレー・ヒッターか何かか?」
 好奇心を前面に押し出す八雲に、哲哉は少し呆れて答えた。
「そんなに都合よく、実績のある経験者ばかりいないさ。けど、運動神経の良さは保証するよ。何てったって陸上部の短距離ホープだからな」
 感嘆の声を漏らす八雲だったが、すぐに眉をひそめて首を傾げた。
「でもよぉ、陸上部のホープが野球部に入ったりするのか?」
「小早川ってやつなんだけど、中学の時に百メートルの県記録出して以降、タイムが伸び悩んでてな、団体競技に興味もあるみたいだし、期待していいとおもうよ」
 自信あり気な哲哉に、八雲は疑うことなくその言葉を受け入れていた。
「まぁ、大澤さんの事は俺に任せて、てっつぁんはそのホープ君の方を頼むわ」
「独りで大丈夫か?」
「誠意を尽くせば何とやらさ、まっすぐぶつかりゃ、何とかなるだろ」
 そういって笑う八雲に、哲哉も微笑んで頷いた。
「そうだな、大澤さんには俺が策を弄するよりも、八雲のまっすぐさの方が有効かもしれないな」


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