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ロストクロニクル8―18

[339]  五十嵐時  2009-11-12投稿
フラットはタクトに島のことについて語り始めた。
「この島は僕達パラス、いや、パラスとルパスの住人達の祖先にあたる人々の島」
「祖先の島?」
「はい、その昔、この国はルパスパラスというひとつの大陸でした。でも、内乱が激化したため、女神によってふたつの国に別けられ、ルパスに『科学』をパラスに『不死鳥』を与え、それを使い、各々の国を守るようにしました。ここまではいいですよね」
タクトはフィールに教えていた事を懐かしく思いながら頷いた。
「でも、この島は例外でした。この島はその内乱から唯一逃れていた場所だったからです。そして、この場所には科学や不死鳥よりも偉大な女神からの遺産が託されました」
「そんな話、聞いた事がない」
タクトは驚きを隠せなかった。
「僕も驚きました。牢の中で聞いた話です」

(静かにしろよ)
シルヴァとブロウは町の外れにある自分達のアジトの地面に隠された入り口の前に立っていた。
(まさか・・・この場所がばれるなんて・・・)
(シルヴァさん)
ブロウがシルヴァの険しい顔を見て心配して声を掛けた。
(ああ、行くぞ!)
シルヴァとブロウは地面の隠し扉から地面に潜り込んだ。
そして、見つけた。
「やぁ、お帰りなさい」
お世辞にも広いとは言えない自分のアジトの中に、多くのシルヴァの仲間達の死体の中に座り、紅茶を啜る青年の姿があった。
「傀儡!貴様!何をした!」
シルヴァは怒りで自分の拳を力いっぱい握った。
「ぼくは何もしていませんよ。只、彼らが自分達の手でしたことです。貴方は違いますか?」
傀儡は目を見つめた。
「貴様の能力にかかる訳がないだろう!」
シルヴァは咄嗟に腕で目を覆った。
「おや?お連れの方は心変わりなされたようですよ」
シルヴァがブロウを見た時にはすでに遅かった。
ブロウの剣がシルヴァの胸を貫いていた。
「・・・そんな」
「人の心とは、こんなにも軽い」
傀儡は消えゆく意識の中にあるシルヴァに不気味な笑みを見せた。

「遅いなぁ。シルヴァの奴」
イエルは部屋の片隅で小さな声で何かを祈り続けていた。
「心配だ」
タクトはゆっくりベッドから降りた。
「タクト、無理しちゃだめよ」
「もう大丈夫さ」
タクトは体中に走る刺さるような痛みに顔を歪ませた。

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