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白い天使のうた (9)

[463]  宮平マリノ  2009-11-13投稿
りら(彼女)の方も、だいぶ心を開きつつあるのかもしれない。

始め警戒するように、振り返り振り返りにらみつけるように退散していた彼女も、
最近では別れの際に軽く頭を下げるようになった。

いつも(気をつけ)をして、深々と頭を下げ一礼する塚本に真似るようになったのだ。

ごくたまに、はにかんだのか、ひきつっているのかわからない顔で会釈する時がある。
ずっと動かしていなかった筋肉の、どこを動かせばいいのかわからないのかもしれない。

塚本も、始め気付かなくて、不審に思っていたのだが、
彼女が”笑おうとしている”と気付いた時、
見送る彼女の後ろ姿を見て、涙が止まらなかった。
彼女が”変わろうとしている”。


何も無かった地に、
新しいいのちが芽生えたような、
そんな感動をした。


彼女の傷ついた心に、
少しずつ、雨の水溜まりのようなものが満ちてゆく。

「もっと、満たされてほしいな。」

塚本は、静かに閉められた扉に向かって、
そう祈った。




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