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デッド オア...?

[341]  兼古 朝知  2009-11-16投稿
「じゃあ、次のとこ行かなきゃなので!また会おうね!」
信の妹が元気な笑顔を浮かべ、私に手を振る。
「うん、どこかで…!」
私も笑い、手を振り返した。
「じゃな」
短く言って、信が車に乗り込もうとする。
「…信」
「何…?」
私は咄嗟に引き止めてしまった。信が振り返る。
その表情は、いつもと変わらない、信だった。

…君は知らなかったろうね?今も知らないだろうね?そしてこれからも…知りはしないだろうね?
(言えない、言えないよ…スキだなんて…)

…その時、私が自分がどんな顔をしていたかは知らない。

「何だよ…妙な顔して」
信の言葉で、ハッとする。
「…ううん」
私は作れるだけの笑顔で、言った。
「信…さよなら」
「おう。…バイバイ」
私も信も、『また』とは言わなかった。
それだけ遠くに引っ越してしまうから…。
また逢える保証なんてどこにもないもの。
信たちの車が見えなくなるまで、私は手を振っていた。
(まただなんて傲慢なこと…言えるハズないじゃん)
信が私の家に来てくれただけで、もう十分じゃない…。また会えただけで…それでいいじゃない。

受け取ったケーキの箱は、箱についていた露以外に、いつの間にか別の塩辛い水に濡れていた。

また会いたい…。
そんな気持ちを押し殺して、私は祖父へ参りに来た客を座敷に案内した。
「おじーちゃん…ゴメン」
小さく、そうこぼして。

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