携帯小説!(スマートフォン版)

トップページ >> 恋愛 >> 魔女の食卓 23

魔女の食卓 23

[384]  矢口 沙緒  2009-11-21投稿


『魚料理』
神々の糧


その手に宿りし
神の御業で
すべての者を
導かん
すべての者を
滅ぼさん


昼食の時間が来る。
石崎武志はデスクの一番下の引き出しを開けた。
そこには川島美千子が作ってくれた弁当が入っている。
彼はそれをデスクの上で広げた。
サンドイッチと鳥のカラ揚げ、ウインナーとサラダ。
彼は女子社員を呼ぶと、コーヒーを持ってきてくれるように頼んだ。
そして、ウインナーを一つ摘まむと、口に放り込んだ。
市販のウインナーとたいして変わらない外見とは裏腹に、その風味と香りは別物だった。
彼は以前に最高級のドイツ料理店で、店自慢の手作りウインナーを食べた事があった。
今までは、そのウインナーが最高だと思っていた。
たが、このウインナーを口にした瞬間に、それは間違いだという事を思い知らされた。
川島美千子の作る料理の素晴らしい所は、そのひとつひとつが記憶にくっきりと焼き付いて、忘れられなくなるところだ。
それほど鮮烈で驚きに満ちている。
すべての料理が個性的で、それを食したとたんに、感動に近い感情さえ沸き起こる。
それまではたいした興味も示さずに、ただ漠然と食べていた物、たとえばここにある鳥のカラ揚げやウインナーなど、これらの物とは普段あまり真剣な態度で向かい合うことはなかった。
しかし、彼女の作ったそれを口にすると、それらの食べ物が、実は評価に値する立派な料理であった事を再認識させられる。
川島美千子は石崎武志の料理に対する価値観をすっかり変えてしまった。
彼の味覚を虜にし、そして夢中にさせた。
この二週間、石崎武志はまったく同じサイクルの生活を繰り返していた。
仕事が終わると車で会社をでる。
いつもの場所で川島美千子を拾い、そのまま彼女の家まで直行する。
彼女の家で夕食を食べ、そして帰りにクッキーをもらって帰る。
翌朝にはそのクッキーを朝食代わりに食べ、そして出社する。
川島美千子は誰よりも早く出社して、作ってきた弁当を石崎武志のデスクの一番下の引き出しに入れる。
彼は昼食にそれを取りだして食べる。
そして仕事が終わると川島美千子を乗せて、彼女の家に行く。
その繰り返しだ。

感想

感想はありません。

「 矢口 沙緒 」の携帯小説

恋愛の新着携帯小説

利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス