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幸せをきみに -届け、この歌- 9

[286]  きゃしー  2009-11-21投稿



だからこれも
きっと夢や。



でも、目の前にいる
記憶とは違う和樹の姿が
逆にこれは現実やって
そう教えてた。

柔らかい黒髪は
明るい茶色に変わっていて
風に揺れるたびに
その隙間から見えるピアス

痩せたんかな
記憶ではもっと力強かった体も
今はなんだか細く見える

そして青いTシャツに
黒いジャージ

記憶の中でも
夢の中でもない。
今、目の前にいるのは
今の和樹や。

もしかしたら別人かも

そんな考えも浮かんだけど
あたしに笑いかけるその目は
間違いなく和樹だ


「久しぶりやな」

和樹がいる。
今、目の前に

「まお」

まおって呼ばないで

あたしはいろんな感情が
溢れてしまうのを
堪えるのでただ必死やった。
その名を呼ぶ声だけで
泣きそうになった。


あたしの記憶の中で
和樹の声だけは消えしまってた。
夢の中でずっと黙ってたのも
きっとそのせい。
こうやってだんだん
消えていくんやって
あたしは何度
思い出そうとしても
思い出せない声に
寂しくなってた。

でも今、
あたしの記憶に
和樹の声が戻ってきて
ぼやけかけていた記憶が
はっきりしたものになった

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