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魔女の食卓 28

[374]  矢口 沙緒  2009-11-22投稿


そのひとつひとつに対して、丹念な質問を繰り返した。
石崎武志の記憶力と観察力、そして食材の知識は川島美千子を感心させた。
「これで全部ね。
どうもありがとう。
すごく参考になったわ。
それじゃあ…
来週にしようかしら。
来週の藤本専務の都合のいい日に、ここに専務を招待してください」
「えっ?専務をここへ」
「だって、このままじゃ困るでしょ、専務との関係」
「そうだなぁ、かなり怒ってたからなぁ」
「でしょ。
だからその関係を修復してあげるわ」
「修復って、いったいどうやって?」
「簡単よ。
あなたが正しい事を、証明すればいいんでしょ。
任せておいて。
料理は魔術だってところを、見せてあげるわ」



車は夜道を走り続けていた。
石崎武志にとってはすっかり通い慣れた道だったが、今日は少し勝手が違っていた。
助手席には川島美千子ではなく、イライラした藤本専務を乗せていた。
でっぷりと太り大柄で、金縁の眼鏡をかけている。
白髪混じりの髪を撫で付け、専務という役職にふさわしい貫禄のある男だった。
だが、この前の事以来すっかり機嫌を悪くして、今日もやっと頼み込んで来てもらったのだ。
「君!まだなのかね、そこは!」
二時間近く車に乗せられている藤本は、声を荒立てた。
「あの、もうすぐです。
あっ、その道を入った所ですから」
石崎武志はハンドルを大きく左に切って、別れ道に入った。
道はすぐに広場にでて、川島美千子の家が見えた。
彼女はこの日休暇を一日だけ取って、朝から準備をしているはずだった。
「ここか、君の言っていたレストランというのは?」
「はい、正確には元レストランです。
今はもう営業していません。
とにかく中へ」
石崎武志は車を降り、藤本を即した。
入り口にはすでにエプロン姿の川島美千子が立っていて、二人を出迎えてくれた。
中に入ると、いつも石崎武志が座るテーブルに二人分のディナーセットが用意されていた。
今日はシャーベットの姿は見えない。
「どうぞ」
川島美千子が言うと、藤本は仏頂面のままドスンと腰を下ろした。
よほど腹を立てているのか、彼女に挨拶すらしない。
「じゃ君、始めてくれるかな」
石崎武志が言うと、
「かしこまりました」
彼女はそう答えて厨房に消えた。
藤本は相も変わらず不機嫌そうな顔で、店内に目を走らせていた。

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