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神のパシリ 40

[403]  ディナー  2009-11-26投稿
それから数時間の後。

「…なるほど。思った
以上に厄介な相手じゃ。少し見くびっておったわ」

キアの玉座の間に、
小間使いが二人。
一人の耳元からは、幼い
声の、死の主。

「大儀であったの、月の者よ」

「いえいえ、恐れ入ります。利害が一致しただけの事。
死の主様と会話ができる事、光栄です」

キアは平伏して答えて
いるが、指は煙草を
挟んでいる。

自由な奴だ。

「皮肉にしか聞こえんわ。…まぁよい」

ゼルが口を開いた。

「しかし厄介です。
相手の目的も背後関係も
解らないのでは、迂闊に
手出しできない…」


幼女の声が遮った。

「いや、もはや時間が
ない…」

「…というと?」




「光の軍勢が、冥土に
向かっておる」




「馬鹿な」

「事実じゃ。わらわも
今、先兵を編成しておる。
どうやら、こちらを
疑っているようじゃの」

「…有り得ん。我々は
神の中で、最も魂という価値観を重んじている
立場です」

「言った所で通じまい。ゼルよ、急ぎその
『魂喰い』を仕留めよ。背後関係も、目的も
もうよい。全力を以って抹殺するのじゃ」

「しかし…奴自身は
おそらく魂を持っておりません」

「では、冥土へ連行せい。手段は問わぬ。
わらわが直々に処断する」



「…は」

「よいかゼル。こちらは戦力がいささか足らぬ。
もし刻限を過ぎたらば、おぬしを強制的に冥土へ召喚する。
おぬしはわらわが分け身、貴重な力じゃ。

ゆめゆめ、忘れるでないぞ」


「…は」





この世界に未練などないが…

ゼルは、仕留められなかった己の不甲斐なさと、
妙な責任感と罪悪感に、
また歯を鳴らした。


「…やれやれ。満月で
弱ってる所にかぁ。
泣きっ面に蜂だね」

他人事のようにキアが
ニヤついた。

実際、他人事なのだろうが。

「時間がない。
俺は『奴』を捜す。
…世話になったな」

「勝手に終わらせないでくれよ。こうなったら
とことん付き合うさ」

キアの蒼煙色の瞳が
揺れ光り、
ゼルの鳩血色の瞳と
交錯した。

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