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もし、愛に格差があっても。10

[372]  るー6  2009-11-28投稿
走太は、返事ができないまま、総理が来てしまった。「で…話というのは。」

菜々は、走った。
どこまでも走った。
泣きながら走った。
でも、この感情をぶつけるところなんか、もう何処にもなかった。
気づけば、初めて会った場所まで来ていた。
走太さんが、このままだと強制労働に…
そこに、家政婦が走ってきた。
「菜々様!」
菜々は、振り返らず、ただ待っていた。
「菜々様。お見合いの時間は午後2時です。」
「…それだけ?」
「それと、もう1つ…」
その情報が、菜々の心を突き動かした。
「行きます。」

「答えは…ダメだ。」
「お父さん…」
走太は、「ありがとうございました。」と言って去っていこうとした。
「走太くん!」
香奈はあとを追った。
何とか、走太の腕を掴んだ。
「まだ…終わったわけじゃないよ。」
「…オレは、決めた。国で働かされる奴隷でいいって。」
「走太くん!大丈夫だから!終わってないから!」
香奈の声は、叫びに近かった。
「ありがとう。こういうチャンスを与えてくれて。」走太は腕を振りほどこうとする。でもなかなか彼女の手は離れない。
離れるどころか、後ろから抱きしめてきた。
「お願い…私を好きって言って…。」
走太は黙ったまま。
「走太くんが強制労働にいくのなら、私も行く。」
「だからオレだけでいいんだって!」
「私は走太が…。」
走太はゆっくり振り返った。
「実は、好きな人がいるんだ。」
「……。」
さっきまであんなに話していた香奈が急に黙り込んだ。
「ごめん。香奈。」
走太はしゃがみこんでしまった香奈を立たせた。
「またしばらく会えるから。ネットカフェで。」
「……。」
「じゃあな。」
走太の足音が、だんだん遠くなっていく。

やがて、聞こえなくなった。

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