茹で卵
「いらっしゃい。お、久しぶりだな。」
居酒屋の引き戸を開けて入って来た初老の男を、店の大将は、威勢のいい声でむかえる。
「おぉ、久しぶり。」
初老の男が、軽く手を挙げ大将に挨拶をしたあとカウンター席に腰をおろした。
「なんにする?まずビール?」
「ん、頼む。」
「ツマミは何に?」
「さっぱりしたやつで、何かある?ゆでたまご食べたんだよ。さっきに。今日、あんまり食うわけにはいかないんだけど。」 「さっぱりしたやつね。分かった。けど、どうしたの?いつもはここで済ましちまうのに。晩メシ。」
「いやね、今日このあと息子夫婦が帰ってくるんだよ。それでなぜか俺も一緒に晩メシ、食うことになったんだよ。」
「帰って来るって、どっか行ってたの?」
「旅行。夫婦二人で。」「二人で?娘はどうしたんだ?」
「預けてったよ。俺に。家内が死んでから洗濯とかはできるようになったし、料理は元々できたから、旅行している間なら預けても大丈夫だろうって。 」
「へぇー。だから最近来なかったんだ。 けど、孫はずいぶんうまいもん食わされたんだろうな。元料理人が作ったんだから。」
「腕はなまったけどな。しっかしヤバイなぁ。やっぱりビールだけにしとくよ。晩メシ食えなくなるから。」
「少しぐらいならいいんじゃ。」
「だから、ゆでたまごを食べ過ぎちゃったんだよ。」
「そんなに?孫の好物かなんか?」
「ん、そんなとこ。」
「お義父さん!今までどこ行ってたんですか!」
「飲み屋だけど。」
「オヤジ!真奈は!真奈は一緒じゃないのかよ?」「違うけど。」
「さっきっからどこ探しても居ないんだよ。」
「トイレ?」
「居ないって。」
「ふーん。」
初老の男は静かに、台所にある大きな寸胴鍋を見た。
茹でた孫
居酒屋の引き戸を開けて入って来た初老の男を、店の大将は、威勢のいい声でむかえる。
「おぉ、久しぶり。」
初老の男が、軽く手を挙げ大将に挨拶をしたあとカウンター席に腰をおろした。
「なんにする?まずビール?」
「ん、頼む。」
「ツマミは何に?」
「さっぱりしたやつで、何かある?ゆでたまご食べたんだよ。さっきに。今日、あんまり食うわけにはいかないんだけど。」 「さっぱりしたやつね。分かった。けど、どうしたの?いつもはここで済ましちまうのに。晩メシ。」
「いやね、今日このあと息子夫婦が帰ってくるんだよ。それでなぜか俺も一緒に晩メシ、食うことになったんだよ。」
「帰って来るって、どっか行ってたの?」
「旅行。夫婦二人で。」「二人で?娘はどうしたんだ?」
「預けてったよ。俺に。家内が死んでから洗濯とかはできるようになったし、料理は元々できたから、旅行している間なら預けても大丈夫だろうって。 」
「へぇー。だから最近来なかったんだ。 けど、孫はずいぶんうまいもん食わされたんだろうな。元料理人が作ったんだから。」
「腕はなまったけどな。しっかしヤバイなぁ。やっぱりビールだけにしとくよ。晩メシ食えなくなるから。」
「少しぐらいならいいんじゃ。」
「だから、ゆでたまごを食べ過ぎちゃったんだよ。」
「そんなに?孫の好物かなんか?」
「ん、そんなとこ。」
「お義父さん!今までどこ行ってたんですか!」
「飲み屋だけど。」
「オヤジ!真奈は!真奈は一緒じゃないのかよ?」「違うけど。」
「さっきっからどこ探しても居ないんだよ。」
「トイレ?」
「居ないって。」
「ふーん。」
初老の男は静かに、台所にある大きな寸胴鍋を見た。
茹でた孫
感想
- 35146: つまんないし文才能力がない [2011-01-16]