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ロストクロニクル10―2

[390]  五十嵐時  2009-12-09投稿
〔数日前〕
ルパス城の一室、多くの装置や機械に囲まれた部屋の片隅で大きすぎる椅子に腰掛け、震える人影と、それに話しかけている大男がいた。
「どうした?サーブ、お前の作品がどんどん潰されているらしいな?」
大男が少女を嘲け笑う。
「まだまだ、こんなの許容範囲内よ。想定の範囲にすぎない・・・」
大男に背を向け、画面を見つめるその後ろ姿は震えている。
「言葉と態度が正反対だが?」
彼女は不気味な笑い声を部屋中に響かせた。
「わたしがパラスごときに押されているとでも?」
「てっきり俺はそう思っていたが?」
大男の小馬鹿にする口調を聞いた途端、彼女の口調が今までとは全く変わった。
「・・・そう、だったら、見せてあげる。神から授かった、科学の力を」
彼女は椅子を回転させ、大男を振り向いた。
「楽しみだな。お前がその気なら、俺も力を貸してやる」

「シャープさん、ごめんなさい。この宝石の使い方を知らないなんて嘘をついてしまって」
「い、いえ!仕方ないですよねー。王族には簡単に話せない秘密があるものでしょうからね」
言葉では反省するチェロを宥めていたが、目線はばっちりドローをマークしていた。理由はもちろん盗まれないように。
そんな時
「おい、静かに、聞こえるか?」
パットの声で一同が沈黙した。
「パラス城の方が騒がしいな」
四人は部屋を飛び出た。
遠くに聳えるパラス城の方から数え切れない悲鳴が響いてくる。
「何が起こってるの!」
「行くぞ!」
ドローの声で四人は走り出した。

タクト達は、名前も知らない背の高い草が生い茂り、さらに地面がぬかるんでいる沼の一歩手前のような場所を延々と歩いていた。
「オーケスはまだかー?」
この声は何度聞いたことか。
「最短を通ってますから、もうすぐですよ」
「ちょっと待って・・・」
突然パールが座り込んでしまった。
「パール、大丈夫か?」
パールの痛みの正体に気付いているのはタクトだけだ。
タクトがパールが座り込む度に「背中の傷は大丈夫かい?」と聞き、パールは「ええ、大丈夫。ありがとう」という会話を何度も繰り返していた。
「この地帯さえ抜けられれば、もうオーケスが見えますよ」

そんな四人を、後ろから尾けてくる人影があった。

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