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神のパシリ 47

[431]  ディナー  2009-12-10投稿
「…これを」

女従者を形代にした
月の女神の手から、
鍵のような物が
こぼれ落ちた。

代わりに、女従者の
ピアスが片方
なくなっている。




「時は…歪める事は
できたとしても、
止める事は何者にも
できない。
神とて、その力を
もってはいない。

何故なら、時を操るとは神の存在や役割すら
無意味となるからだ。

時を操れぬように
したのは、神々達
自らへの戒めでもある。
そして保身でもある。



だが、かつてその禁忌を
破った者がいた。
それは神でも、
人でもない存在。

すなわち、お前達と同じ
小間使いだ。

理由は知らぬ。
知る必要性もない。
どんな理由も、
それを赦す材料とは
なりえないから。

その者は禁忌を
己のために使う事は
なかった。
おそらく、ただ
知りたかったのやも
知れぬ。
時の、『流れ』を
操る術をな。

その者は、進んで
拘束を望んだ。


老いれば、死の恐れから
時を操るかも知れぬ。

世界にいれば、欲から
時を操るかも知れぬ。

関われば、他人のために
時を操るかも知れぬ。

縛らねば、好奇心から
時を操るかも知れぬ。



……とな。

そして、私が拘束した。

その者に、
『流れない』
空間を作らせ、その中に
閉じ込め、縛りつけた。





それは、
その空間の『鍵』だ。




そやつを使えば良かろう。誰も傷まぬ」


ゼルは、その
鍵を手に滑り込ませた。

「…いいように
使いますな、力も、命も」
ゼルの皮肉に、
女従者の口元が歪む。

どうやら笑ったらしい。

「やはり…
我々も、
人間も、
神の道具なのですか」

月の女神は、ゼルの
質問には答えなかった。


「神とて我が身が
可愛いのよ。
それに、神とは
自らの世界なしでは
生きて行けぬ、
まこと不便なものなのだ」

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