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世界でひとつだけの物語。?

[526]  麻呂  2009-12-23投稿

イブの日の朝――


それは、目覚めとほぼ同時だった。


ベッドの中の私が気付いた事。


何でこんなに天井が近いんだろう。


え!?見える!?


もしかして本当に見えてる!?


思わずベッドから飛び起き、部屋の中を見回した。


見える。見えてる。

間違いなく私の目は見えている。


夢が現実になった――


こんな事って本当にあるの!?


数日前の夢の内容を思い出した。


“君の願い事を叶えてあげよう”


神さまって本当にいたんだ。


鏡に自分の姿を写してみようと思ったけれど、


私の部屋に鏡は置いていない。


いつもは、杖をついての階段の上り下りさえも、


走って駆け下りた。

勢いよく階段を駆け下りる私の姿を見て、


驚いた母は言った。

『桃子‥か、階段は‥ゆ‥ゆっくり下りなさい‥‥。』


母の声は震えていた。


迷わずに向かった先は洗面所。


洗面台の前の鏡に写し出された自分を見た。


『私‥‥これが私‥‥‥‥。』


そこには、


私が想像していた私とは全く別の私がいた。


自分が他人に、どう見られているのかを、いつも気にしていた私。



『私って、こんなに綺麗だったんだ。』


初めて知った本当の自分の姿。


嬉しかったせいか、涙がこぼれた。



『桃子は、お母さんの子だもの。

綺麗で当然よ。』



『お母さん‥‥。』


『いいの。何も言わないで。

これは、きっと神さまが桃子にくれたプレゼント。

今日は彼とデートでしょ!?

早く支度しないと遅刻しちゃうわよ。』


胸がいっぱいで、言葉が出て来ない。


母は何故、こんなに落ち着いているのだろう。


まるで、神さまが私の願いを叶えてくれた事を、


母は知っていたかの様だった。


私は、生まれて初めてメイクをした。


妹からメイク道具一式を借り、


生まれて初めてルージュを引いた。


鏡の中の私は、


今日の着こなしのお手本にした、


雑誌の中のモデルさん達に負けないほど、綺麗だった。


今日の私を見て、彼は何て言うだろう。

目が見える事を知ったら、きっとびっくりするだろうな。


胸がはずんだ。


これから、彼と会うんだ。


彼と会える。


家を出た私は、心の中でつぶやいた。



神さま、ありがとう――

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