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MLS-001 033

[1203]  砂春陽 遥花  2009-12-26投稿
皇鈴の黒い目に、
白い意志が
光っていた。

「MLSには
力があるけれど、
貴方にはない。

だから、
知識だけでも
もっておいてほしい。」

ほしい…

何故か語尾だけが
耳に残ったが、
その訳は敢えて追わない。

明広は間を置かず、
心の向くままに
言葉を重ねた。


海滝博士に
お会いになったのですか?


皇鈴がうなずき、
テーブルの上に
視線を落とす。

その沈む目線に
つられるように、
今度は、声が出た。

「もしや、
医者が
紹介した研究者が?」

休んでいた声帯が
くぐもった音を立てた。
唇の縫ったところが、
少し痛い。

わずか1時間も
黙っていなかっただろうが、
労せず空気を揺らす躰に
『今』を感じる。


皇鈴は
動かない。

言葉を切り
口を開け
息を吸うと、
喉の奥で淀んでいた空気が
晴れた。


皇鈴は
まだ動かない。
でも、
聞こえているはずだ。

当事者の思いなど
全く意に介さない
真っ直ぐな好奇心に
触れたのが、
初めてではないのだろう。

明広は
悪いと思いながらも、
俺とて
教科書の文字の羅列と
自分の彼女の行方とを
結びかねているのだと、
半ば開き直り
半ば意地悪に
答えを待った。

「そう。」

皇鈴が
再び目をあげた。
今を見る目と
今でないものを見る目が
すれ違う。

ああ、
俺に心が読めれば。

声に出す、
その作業さえなければ
幾分楽だろうに。

「あはは、
他人の同情してる場合?」

緩んだ口元と対照的に、
目が、
土色に濁った水の底から
『今』を見ている。


窓の外、
ゆらめく木々の間から
いびつな多角形に
区切られた
小さな空が映る。

何処までも、
薄く薄く青い空。

「ドクターミタキの
出した条件は、2つ。」

抑揚のない声が、
言葉以上のものを
語っていた。

「まず、私が無条件に
彼の研究に協力すること。
そして、
子どもを1人選ぶこと。」

もう
後戻りは出来ない。

感想

  • 34583: 翔:静かな会話シーンでありながらも…激しく行き来をする心の [2011-01-16]
  • 34584: 翔:キャッチボールが、ひしひしと伝わります! [2011-01-16]
  • 34589: 翔:想像力を膨らませながら続きの読める日を楽しみに待ってます [2011-01-16]
  • 34624: ゆっくり書いてもファンは楽しみに待ってますよシャイン [2011-01-16]
  • 34690: 翔サン、シャインサン有難う御座います。まさか本日中にコメント [2011-01-16]
  • 34691: 頂けるとは思わず…嬉しいです。恐らく本年最後の投稿。新年も [2011-01-16]
  • 34694: 宜しくお願い致します。よいお年を〜!遥花 [2011-01-16]
  • 34731: 遥花さん!よいお年を…早いぜぃ(笑)まあまあ…シャイン [2011-01-16]
  • 34769: 早かったですね(笑)僭越ながらシャインサンの大ファンなので [2011-01-16]
  • 34770: 先のコメント本当に嬉しかったです。あっ…電池がっ(汗遥花 [2011-01-16]
  • 34819: シャインは神から拒否なので桃子という作家名で最近書いてます [2011-01-16]
  • 34823: 有難う御座います♪実はこっそり読ませて頂いてます(照 [2011-01-16]

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