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世界でひとつだけの物語。?

[451]  麻呂  2009-12-29投稿

その日、

彼は、私のわがままをたくさん聞いてくれた。


目が見えないからという理由で、外出する事を避けていた私にとって、


ボーリング場やカラオケなどの娯楽施設へ行く事さえも、


生まれて初めての事だった。


初めて投げたボーリングの球。


初めて持ったマイク。


見るもの全てが、私には新鮮だった。


その後に観た映画は、アクション物。


彼は、恋愛物が観たかったらしいけど、

私が観たい物を優先してくれた。


私が恋愛物よりも、アクション物を選んだ事は、彼には意外だったみたい。



『桃子。そろそろ食事しない!?

僕の知り合いの店なんだけど。』



『えぇ!?宇野崎さんて、こっちにも、お知り合いの方がいらっしゃったんですね!?』



『うん。これでも結構、手広くやってるからね僕。』



着いた先は、おしゃれなレストラン。


テーブルマナーなんて全く知らない私に、彼は言った。



『ハハハ。大丈夫だよ。僕が教えてあげる。

お箸も、もらってあげたから、好きな方を使っていいんだよ。』



ふとした場面で感じる彼の優しさ。


あぁ、やっぱり私はこの人が好き。



『桃子。どうしたの?お腹空いてない?
それとも、こういう店、苦手だった!?』



『ううん。違うの。
美味しいお料理と、今日、初めてあなたの姿を、この目でハッキリと見れた事が、

すごく嬉しくて‥‥胸がいっぱいなの。』



『‥‥うん。僕も嬉しいよ。今日、桃子に会う事が出来て。』



私の為にイブに会う時間を作ってくれた彼。


今日という日の思い出が今、


こうして二人で一緒に過ごしている時間と共に、


ゆっくりと私の記憶の中に刻み込まれてゆく。

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