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人斬りの花 36

[378]  沖田 穂波  2010-01-03投稿
7-5 心路つ

『どうした,手も足も出ないか。』

余裕の平太は言った。

抄司郎は素早く身を引いて,中段に構えた。
平太の出る隙をうかがい弱点を探った。
しかしそれよりも,
平太の動きの方が速かった。一瞬で間合いに入ったかと思うと,既に頭上には平太の刃があった。

ー 死ぬ‥!!

抄司郎は地面に倒れ込んだ。それと同時に大量の血が舞った。

『何故邪魔をする!!』

平太の怒鳴りつける声が聞こえた。

抄司郎は強く瞑っていた目をあけた。
目の前には赤黒い大量の血が広がっている。
その中に居たのは,

椿だった。

椿は抄司郎の盾となり斬られたようだ。今にも息が絶えそうである。

『椿‥,椿!!』

抄司郎は血の中の椿を抱き上げた。

『‥抄司郎さん,』

椿はもはや話すこともままならず,殆ど空気だけの声で言った。

『約束。しましたよ,生きて帰ると。』

『‥どうして‥,』

『‥幸せをたくさんくれたから,恩返しがしたかったんです‥』

抄司郎の視界が涙で歪んだ。

『‥でも,俺の幸せは椿そのものなんだ‥!!』

椿はその言葉を聞いて満足そうに微笑んだ。

ー 私も‥

『抄司郎さん。お願いがあります‥』

『‥お願い?』

椿はこくりと頷くと,
脇に落ちていた抄司郎の刀を握った。

『‥殺して下さい。』

『‥え,』

『私の命は,あなたの手から奪って欲しい‥
私はあなただけのものだから‥!!』

放っておいても椿の命は尽きてしまうだろう。
しかし,自らの命は抄司郎の手にかかり終わる事を,椿は望んでいた。

『そんな事‥俺には,』

椿に剣を浴びせる自分を考えるだけで,抄司郎は自分を殺したくなった。

『できない,出来るわけがない‥。』

『お願い‥!』

命の炎は,どんどん弱くなっている。

『抄司郎さん‥』

椿は遠のく意識に耐えながら言った。

『私は抄司郎さんになら斬られても幸せなんですよ‥』

『‥。』

『愛しているから‥』

抄司郎は意を決して小太刀を取り出した。
椿が少しでも痛みを感じないように強く体を抱き締め,
小太刀を椿の心臓に突き立てた。

≠≠続く≠≠

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