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世界でひとつだけの物語。?

[441]  麻呂  2010-01-05投稿

『‥見せて‥‥。

もっと見せて‥‥。
あなたの顔。

忘れない様に‥‥

目に焼き付けておきたいの‥‥。』



両手で彼の顔を引き寄せ、



私は、瞳に記憶させた。



そう、



この人が彼よ。



私の愛する彼よ。



ちゃんと記憶しといてね。



私のナイーブな瞳さん。



『‥‥桃子。なんか恥ずかしいな。

そんなにマジマジと見られたら。』



『いいのっ。』



あと一時間もしたら、



私の目は見えなくなる。



だからお願い。



それまでずっと、



こうしていて――





『気持ちいい‥‥。
桃子の肌。マシュマロみたい。』



『あはは。いやだぁ。

宇野崎さんだって‥‥‥。』



泣きながら見た、



あなたの顔は、



泣いている様に見えた――



彼が泣いている。



なんか不思議。



いつもは強いあなたが、



私のために泣いてくれている――





『僕も昔は目が悪くてね。

小さい頃、養護学校に通っていたよ。

杖を取られて、うろたえて泣いていた。
そんな泣き虫な子供だった。

少し成長してからも、網膜剥離の手術を二回受けているしね。』



『そう‥‥なんだ!?

知らなかった。

ごめんなさい。

私、自分の事ばかりで‥‥‥。』



『ううん。いいんだ。

だから僕も、

目に爆弾を抱えている様なもの。

そして、桃子の気持ちも、少しは分かっているつもりだよ。
これからもずっと‥‥ねっ!!』



『う‥‥んっっ‥ぐすっっ‥‥‥。』



『ほらっ、また泣くぅ〜。』



そう言ってから、



あなたは私を強く抱きしめた――



『愛してるよ‥桃子‥‥。』



『うん‥。私も‥愛してる‥‥。』



こんな素敵な夜を、


大好きなあなたと過ごせるなんて、


私は、



なんて幸せなのでしょう。



目が見えない事を、


コンプレックスに思っていた自分に、



今日でサヨナラしよう。



あなたと出会えて本当によかった。



今、



こうして、心からそう思える自分に、



私は、誇りを持ちたい。

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