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白い天使のうた (20)

[587]  宮平マリノ  2010-01-09投稿
「それでは、今日読み聞かせをがんばったみんなに、
歌のプレゼントです。」

大資が大きな声で言うと、
子供たちはワァーと喜んだ。

そんなみんなの喜びの声は、りらには聞こえず、
沢山の人の中にいること、それ自体が少々ストレスのように見えた。

そんな中でも、
「がんばれ、りら。」
言葉にすることの出来ない思いの中で、
祈りながら、
みんなの前にりらを連れて行くと、

子供たちの目が、りら一点に集中した。

さっきまで賞を受けていたみんなの顔は輝いていたが、
りらの顔はうつむいていても、ひきつっているのがわかった。

それでも、りらの手を放し、少し後ろに立った塚本の心に、
もう恐れはなかった。


「大丈夫、りらには、
神様と天使の歌声がある。」

そう心の中で、確信して、
大資に合図を送ると、
いつも繰り返し聴いていた『森の小道』の前奏が流れた。


「あ、顔が変わった。」

施設の誰もが思った。

りらにとっては、
音楽が空気そのもの。

自分を包み、
心に息を吹き込んでくれるもの。

次第に、自分の声が周りを包み始めると、

りらは安心と落ち着きを取り戻した。


”自分の声に癒されている”

塚本はある時から、そのことに気付いていたが、
りらの声自体が、
りらの心を癒していった。

「すごい。」

次第に、子供たちの小さな声が漏れてきた。


りらの声は、
周りの空気の色を変える力があった。

透明なシャボン玉に、
たくさんの色づけをして、
手元に届けてくれるような、
空気いっぱいを、
ステキな色へと変えてくれた。


時々、子供たちが、
周りを見渡しては、
一緒に歌っている人がいないか、探しだした。

そして、りら一人しか歌っていないことに
不思議そうな顔をして、
また、りらの声を聞いた。

「あ、子供たちにも聞こえているのだな。」

塚本は、そっと笑ったが、
他の施設の大人たちは気付いていないようだった。


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