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子どもは、家を選べない〜その19〜

[696]  真理康子  2010-01-20投稿
それでも、結衣子は、仲間や友人に恵まれ、翔を本当の意味で守っていくのは、親である自分であるという自負で、不幸を感じたことはなかった。
人は、暗いことを考えていれば醜くなり、その反対の場合には、やはり、それなりに反映するものがあった。

結衣子は、隣近所や親戚の者からも綺麗ですね。妹さんと歳が逆みたいですねと声をかけられることが多かった。

病気を患う以前の自分の姿にウェイトを占めて、その辺りは、社交辞令として聞き流せたことは、美貌に対して思い上がらずにすんだ。

それをどうこう思わなかったが、すれ違い様に首をすくめたり、こそこそ話している千鶴子と房子にふっと目をやると、あまりの荒んだ表情で、その二人の醜さにはぞっとした。

近くの美容室では、この母娘の猫背をバカにし、姉の結衣子は、他家からもらった娘ではないかと噂した。

房子が姉と同じ学校に在学している間中、周囲から比べられて批判がましい声を聞きながら屈折していくだけのことはあった。
あまりにも、姉妹の質が違いすぎた。
どこかで似通ったものが一つでもあれば、房子や千鶴子に食って掛かることもあったかもしれない。
人は、環境に影響されるが、悪い環境に気付き、これらを反面教師に置き換えるような高眛な精神さえあれば、巻き込まれることはない。

結衣子は、常に、房子や千鶴子らの馬鹿馬鹿しい連携から距離をおいた。
自分の幸せは自分で築き、自分で幸せを噛みしめた。

翔に至っても、必ず、親として、翔の心だけは守ると覚悟していた。

その意味では、間違いなく育てて貰えなかった房子は哀れな中年女性でしかなかった。

千鶴子と房子は、何をするために、この世に生を受けたのだろうか。

あまりにも、哀れな生きざまの二人の姿である。

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