イズコノキオク3
「で、コウ兄進路どうすんの?」
戦乱の後、落ち着いた食事中の他愛もない会話である。
「兄貴はどこだっけ?」
「質問を質問で返すなよぉ!東大でしょ」
「…そっか。」
「ん?」
うちの兄貴、照哉は三つ歳の離れた名門東仙大学、通称東大の二年生である。まぁ放浪癖というか兄貴は家に帰っておらずこの場にもいない。二年も帰って来なければ放浪というのも疑問だが。
「い、いや全く御苦労なこったぁ〜ね〜。」
「何を人事みたいにぃ。コウ兄もテル兄みたいそこ行くんでしょ?」
「さ、さぁ?どうだろね〜。ご馳走さん。」
「あぁ!ちょっ―」
後ろで何か聞こえるが気にしない。自分の部屋へと駆け込んだ。あまり進路に興味がない…という訳じゃないが今はそんな気分じゃない。
ベッドに突っ伏した。目を閉じると、唯一のある記憶が蘇る。
時は二年前に戻る。あの事故直後だ。あの朦朧とする意識の中、俺はある人影を見た。それは男だった。三つくらい年上の、それも毎日見ている、あのいつも優しい兄だった。
兄貴は俺の意識の途切れる前にこう告げた。
「御前は流れに逆らった。それが罪人にかせられた科(とが)の重さだ。」
その一言で俺の意識と記憶、そしてあの優しかった兄貴が俺の元から去っていった…。
「そんなんで…兄貴の所なんか行けるかよ…。」
遭ってしまうと事実が知れてしまうから。
昔の自分が知りたいけれど。
今までの自分が違ってしまいそうで。
この自分の存在自体がなかったことにされそうだから―\r
そんなことを思いながらいつの間にか夜が明けていた。
戦乱の後、落ち着いた食事中の他愛もない会話である。
「兄貴はどこだっけ?」
「質問を質問で返すなよぉ!東大でしょ」
「…そっか。」
「ん?」
うちの兄貴、照哉は三つ歳の離れた名門東仙大学、通称東大の二年生である。まぁ放浪癖というか兄貴は家に帰っておらずこの場にもいない。二年も帰って来なければ放浪というのも疑問だが。
「い、いや全く御苦労なこったぁ〜ね〜。」
「何を人事みたいにぃ。コウ兄もテル兄みたいそこ行くんでしょ?」
「さ、さぁ?どうだろね〜。ご馳走さん。」
「あぁ!ちょっ―」
後ろで何か聞こえるが気にしない。自分の部屋へと駆け込んだ。あまり進路に興味がない…という訳じゃないが今はそんな気分じゃない。
ベッドに突っ伏した。目を閉じると、唯一のある記憶が蘇る。
時は二年前に戻る。あの事故直後だ。あの朦朧とする意識の中、俺はある人影を見た。それは男だった。三つくらい年上の、それも毎日見ている、あのいつも優しい兄だった。
兄貴は俺の意識の途切れる前にこう告げた。
「御前は流れに逆らった。それが罪人にかせられた科(とが)の重さだ。」
その一言で俺の意識と記憶、そしてあの優しかった兄貴が俺の元から去っていった…。
「そんなんで…兄貴の所なんか行けるかよ…。」
遭ってしまうと事実が知れてしまうから。
昔の自分が知りたいけれど。
今までの自分が違ってしまいそうで。
この自分の存在自体がなかったことにされそうだから―\r
そんなことを思いながらいつの間にか夜が明けていた。
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