池上花屋
嫌いだ。
花は嫌いだ。
なぜか?そう聞かれたら解らないと答えるしか出来ないだろう。
家は花屋を営んでいて、僕は小さな頃から手伝いと称して花を育てていた。
別に花を育てる事は楽しかったし5歳になる頃には一人前にバラの大輪を咲かせてみせた。今では花のアレンジだってできる。
だけど、昔はあんなに好きだった花が今では嫌いになっている。
なぜだろうか?
学校から帰った僕は直ぐ二階の自室に戻り着替えた。
そしてエプロンをしながら階段を降りて5時丁度に店番をする母と交代した。
母は俺と交代している間に食事、家事をする。
アルバイトは雇っている。けど、どうしても花の売れる季節になると人手が足りなくなる。
アルバイトなのだから細かい所は母しか決められない。
そうすると母が店番を抜けている間、お客さんへの対応がどうしても遅くなってしまうのだ。
その穴埋めにと僕が店番をして母の代わりになる。
高校生だと侮られるので私服に着替え歳を誤魔化して見せている。
どうせ僕は老け顔だ。チッ
店に繋がるドアを開けると、途端に様々な花が主張する匂い広がる。
「あ、おかえりー琴梨君。」
いつも一番に声をかけてくれるのは大学生のバイトの多田さんだ。
「スミマセン。遅くなって…」
僕は悪びれもなく誤った。
謝っておけば、取り合えず当たり障りのない人間関係を築けるからだ。
「大丈夫だよ、琴梨君。どうせ暇だったんだからさ」
久賀さんもカーネーションの花束のアレンジをしながら声をかけてきてくれた。
あと母の日まで2日だ。
僕も急いで作業に取りかかった。
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